平成28年度の研究計画では、酸素透過膜を用いた硝化の最適化と硝酸イオンの電子受取による電力出力効率の評価を行い、研究を総括する予定としていた。 最も酸素供給性能が高いシリコーン膜のKLaは1.8d-1であり、このとき供給されたすべての酸素がすみやかに硝化反応に利用されたと仮定すると、理論的な硝化速度は3.0mgN/L/dと見積もられた。一方、実際にシリコーン膜に硝化細菌を付着させると52.5mgN/L/dの硝化速度が得られ、理論値の約18倍となった。付着した硝化細菌が供給された酸素を消費することで、シリコーン膜内外の酸素の濃度勾配が大きく保たれたことにより、硝化細菌が付着していないときよりも多くの酸素が槽内に供給されたものと考えられた。次に、この酸素透過膜を正極槽に導入して二槽式MFC装置を運転したところ、負極槽内の有機物減少にともない、正極槽内の窒素の減少が確認された。硝化速度は38.8mgN/L/d、電子の受容による窒素除去速度は4.0mgN/L/dであったことから、本プロセスでは電子受容による窒素除去が律速となることがわかった。この装置の理論的なCEは5.5~9.2%と見積もられたが、実測のCEは2.7%であった。つまり、実際に放出された電子量は理論値の3~5割程度であった。これは、酸素が混入しやすいエアカソード型の運転から移行した直後であったため、槽内に競合微生物が多く存在していたためだと考えられた。 当初予定していなかったアノード槽の一次元微生物膜モデルの開発も行った。既存の研究では考慮されていない発電には寄与しない競合微生物群を組み込むことにより、生物膜の剥離定数をキャリブレーションするだけで有機物除去、電流、CEを再現できることを明らかにした。また、環礁国への適用という観点では、下水管内で有機物除去と発電を達成するためのMFCの設計も検討した。
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