本研究は、申請者らの研究グループが発見した新規な硫黄反応である嫌気的硫黄酸化反応について集積培養、その制御に関する知見収集を目的とする。嫌気的硫黄酸化反応とは硫酸塩がUASB下部で還元された後再度上部で酸化される現象であり、本研究室での硫酸還元菌の機能を利用した低温条件UASB(Up-flow Anaerobic Sludge Blanket)の研究において発見した。この反応は水温17℃以下,ORPは-200~-300 mVの条件で,重炭酸イオンを供した状態で発生した。一連の研究では硫黄酸化細菌について系統学的解析を実施した例がなく,系統学的解析により硫黄酸化細菌の評価を行うことで関与微生物についての知見が得られると考えられる.本研究ではUASB内部で確認された硫黄酸化細菌について系統学的解析を行い,関与微生物の系統分類について調査した。 16S rRNA遺伝子に基づく微生物解析の結果,UASB反応槽下部で硫酸塩還元の観察された汚泥床部分(底部から0.3m)におけるリアクターの細菌及び古細菌の平均検出率は,それぞれ94.1%,5.9%であった.また,UASB反応槽上部で硫化物の酸化が観察された汚泥床部分(高さ0.9 m)ではそれぞれ95.1%,4.9%であった.古細菌については,Methanobacteria綱及びMethanomicrobia綱が大半を占めていた.細菌については,UASB反応槽下部(0.3 m)では硫酸還元菌の多くが属すDeltaproteobacteria綱細菌が最も優占した(全リアクター平均44.6±12.2%)。UASB反応槽上部(高さ0.9 m)ではその割合は減少し(全リアクター平均27.5±5.1%)、Anaerolineae綱細菌の割合が増加(全リアクター平均29.2±1.7%)することが計測できた。
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