研究課題/領域番号 |
15K14060
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
増田 周平 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70552157)
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研究分担者 |
見島 伊織 埼玉県環境科学国際センター, その他部局等, 研究員 (00411231)
西村 修 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80208214)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 亜酸化窒素 / 河川 / 下水処理水 / 安定同位体比 |
研究実績の概要 |
初年度においては,秋田県および宮城県において6河川を対象に調査を実施した。 八郎湖流域の馬踏川,井川および馬場目川において,5月に通日調査を行った。その結果,DN2O濃度は馬踏川において0.90±0.41μgN/L,井川において0.53±0.09μgN/L,馬場目川において0.43±0.06μgN/L(いずれもn=13)であった。一方で,日変動は馬踏川において大きかった。馬踏川においては,溶存態亜酸化窒素濃度(DN2O)は無機態窒素やDOと連動して変動し,夜間(20時から4時)にかけて濃度が上昇した。また,NO3の窒素および酸素の安定同位体比(δ15Nおよびδ18O)の結果から,馬踏川の河川水起源は一日の中で変動することを明らかにした。なお,底泥の細菌叢解析の結果,硝化に関与する細菌では,Nitrospira属が優占化しており,各河川のサンプルの最大値は,馬踏川では0.27%,馬場目川では1.3%,井川では0.29%検出された。 また,宮城県において下水処理水が流入する3河川(七北田川,綱木川,竹林川)を対象に,12月と2月に現地調査を行った。その結果,下水処理水には河川水より高い濃度のDN2Oが溶存し,それが河川に流入することで,河川のDN2O濃度が上昇する現象が見られた。ただし,その上昇の度合いは各河川によって異なる傾向にあった。下水処理水のDN2O濃度は12月では0.2~1.2μg/L程度であったのに対し,2月のDN2O濃度は12~25μg/L程度であり,季節による差が見られた。 得られた知見の一部は,日本水環境学会第3回東北支部研究発表会,平成27年度土木学会東北支部技術研究発表会などにおいて発表した。また,2016年8月に行われるInternational Society of Limnology(SIL)の2016年国際研究集会での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,河川における網羅的N2Oの実態調査を実施するとともに,河川底泥を用いたN2O生成ポテンシャル試験およびゲノム解析を行うことで,河川におけるN2O生成メカニズムの解明と,その影響評価を目指している。 初年度においては,河川を対象として現場調査に着手し,N2Oの実態調査については軌道に乗りつつある。さらに,安定同位体比による起源解析や細菌叢の解析に関する手法の知見の整理,分析・解析環境も整備され,それらに関する一定の成果が得られている。得られた成果は国内学会において既に発表するとともに,国際学会(SIL2016)における発表も予定しており,外部発表も比較的順調に行われている。 一方で,当初分析に使用する予定であったECDガスクロマトグラフが故障し,N2Oの分析装置を新たに立ち上げる必要があったため,現場調査の実施は予定よりも遅れた。なお,N2Oの分析装置については別装置を立ち上げ,現在は分析が行える環境にある。また,河川底泥を用いたN2O生成ポテンシャル試験については,試験に用いるN2Oセンサーの購入に必要な事務手続きに時間を要したこと,底質の組成が想定と異なり礫質の生物膜の寄与が高いと考えられたこと,それにともない実験手法・条件の検討の再構築を迫られたこと,などの理由により,当初の予定よりも進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,各河川における下水処理水の影響をDN2O濃度の観点から明らかにすることを目的として対象河川における現場調査を継続する。季節変化の影響を定量的に明らかにするため,各河川において最低でも年4回の調査を行う。 調査においては,河川におけるDN2O濃度を定量し水質との関係について考察するとともに,底質を採取してN2O生成ポテンシャル試験および細菌叢の分析を行う。N2O生成ポテンシャル試験については,7月までに予備試験を行い,実験方法を確立する。具体的には,底質の採取方法,保存方法,実験装置の形状,温度条件,基質条件,時間条件,実験操作方法など,これまでに検討してきた内容を総合して実験方法を確立する。それらをふまえ,8月に予定している調査において各河川におけるN2O生成ポテンシャルを定量し,比較検討する。また,底質の細菌叢の評価にあたっては,底質に加えて礫の生物膜も評価の対象として,N2O生成特性の裏付けとなるデータの獲得を狙う。 LIME2によるLCA評価は,全ての現場調査の結果をふまえ,底質におけるN2O生成の効果を含め,当初の予定通り2年目の後期に実施する。最終的に得られた成果は,SIL2016(8月),土木学会東北支部技術研究発表会,日本水環境学会年会(いずれも2017年3月)での発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で実施する予定の亜酸化窒素活性試験においては,溶存態亜酸化窒素の成分をリアルタイムで迅速かつ正確に測定する必要があるため,その機能を有する測定機器を購入する必要があった。測定機器の選定・購入において,以前は確定されていなかった機器価格が確定したため,前倒し支払いを請求し,その機器購入に充てた。次年度使用額はそれらの機器購入と使用経費の差額である。
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次年度使用額の使用計画 |
現場調査,室内実験における消耗品の購入に供する。
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