異なる質の下水処理水が流入する河川において現地調査を行うとともに,河川底質を用いてN2O生成ポテンシャルを評価し,下水処理水が河川におけるN2O生成に及ぼす影響を定量的に評価した。異なる3種類の下水処理水(アンモニア残存型,硝酸残存型,アンモニア+硝酸残存型)が流入する河川において,季節毎に調査を行った。現地調査の結果,排出係数(硝酸性窒素に対する溶存態亜酸化窒素の比)は,アンモニア残存型の下水処理水が流入する河川において,IPCCのデフォルト値よりも実測値が高くなった。この要因として,アンモニアの流入にともなう硝化反応が要因で,N2Oが生成している可能性が示唆された。さらに,河川底質を対象にN2O生成ポテンシャル試験を実施したところ,現地調査の結果を支持する結果が得られた。なお,下水処理場における高度処理は河川におけるN2O排出量の抑制に有効であると考えられた。 また初年度と同様に,外部から窒素負荷が流入する河川において通日調査を行った。その結果,N2O濃度は硝酸性窒素濃度と連動していたが,その傾向は前年度のそれと異なり,N2O濃度は日中に高く,夜間に低い傾向が得られた。したがって,同一の河川であっても,N2O生成の傾向は水質の影響を強く受けるものの,日変動の一貫性は見られないことが分かった。 本年度の成果により,従来は考慮されてこなかった下水処理水の地球温暖化影響が明らかにされた。特に,下水処理水にアンモニア性窒素が含まれる場合には,放流先において硝化反応が起こり,N2Oが生成される可能性がある。今後は放流先におけるN2Oの発生を考慮に入れた,下水処理システムの構築や河川環境整備に向けた取り組みが必要であると考えられる。
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