鉄筋コンクリート建物の耐震壁の設計にあたっては,窓やドアなど開口の影響を適切に評価する必要がある。これまで,開口を持つ耐震壁の実験は数多く行われてきた。そのほとんどは,上下に剛強なスタブを設けたうえで行われた。一方,中高層建物では開口間での地震被害がよく見られる。しかし,申請者が調べた限り,このような実験は,国の内外を問わず行われていない。 本研究では,規則的な開口配置はもちろん,不規則な開口配置の場合も含めて3体の実験を行った。試験体のスケールは実大の1/3とし,現実味のある配筋詳細とした。制御の簡略化のため,側柱の軸力は省略した。それを補うために,側柱の主筋量を多めにした。実験により,強度,剛性,変形能力に関する基礎的データを得ることができた。また,開口まわりのひび割れ性状についても貴重なデータが得られた。実験で得られた強度低減率は,日本建築学会の計算規準に示された低減率よりもかなり小さな値であった。さらに,有限要素法解析を行うことにより,日開口周辺の応力分布について知見が得られた。
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