研究課題/領域番号 |
15K14066
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
李 柱国 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (50432737)
|
研究分担者 |
坂本 英輔 広島工業大学, 工学部, 助教 (40583539)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | セメント / ジオポリマー / 岩石 / 仮焼き |
研究実績の概要 |
本研究は、セメント産業の二酸化炭素の排出量を削減するために、脱石灰石のジオポリマーセメント技術を開発することを目指しているものである。平成27年度に、産地が異なる3種類の緑泥石を1000℃以下の温度で仮焼きし、仮焼き前後の化合物と内部構造を分析し、焼成温度と時間の影響を検討し、フライアッシュや高炉スラグ微粉末の添加有無による硬化体の性質を考察した。平成28年度に、さらに以下の研究を実施した。 1. 緑泥石(小川青石)の他に、諏訪石、丹波石、珪質砂岩などの成分を分析し、加熱温度と時間を変えて仮焼き微粉末を得た。ICP 発光分析装置によって仮焼き微粉末(RP)からの金属イオンの溶出量を測定した。また、ジオポリマー(GP)ペースト硬化体のX線回折(XRD)分析を行い、圧縮と曲げ強度を測定した。これらの試験結果より、仮焼きの条件(温度と時間、微粉砕の時期など)を検討した。その結果として、諏訪石(主成分:長石)の場合には700℃1~3時間、小川青石の場合には1000℃1時間の焼成で得られたRPの反応性が高いことを明らかにした。 2. 諏訪石と小川青石のRPを用いたGPペーストの凝結時間を検討し、GP硬化体の内部構造を電子顕微鏡(SEM)を観察し、RPとGP硬化体の化合物をXRDで分析した。また、GP硬化体の圧縮強度、曲げ強度および耐酸性を考察した。 3. XRDによってRPとGP硬化体の化合物を、SEMによってGP硬化体の内部構造を分析し、高炉スラグ微粉末を添加する場合の硬化機構を解明した。また、MgOを添加する場合のGP硬化体の力学性能を考察し、MgO添加の強度増加効果を確認した。 4. 岩石の仮焼き微粉末とアルカリ溶液を用いたモルタルの流動性、凝結時間、力学性能(強度および静弾性係数など)および耐久性(中性化抵抗性、耐酸性など)を考察し、アルカリ溶液成分と構成の影響を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この課題を申請した時に、緑泥石を仮焼きしてジオポリマーセメントを開発する予定であった。平成27年度に緑泥石を使ってジオポリマーセメントの作製を試み、当初の計画どおりに本研究を進めた。平成28年度に、当初の計画どおりに緑泥石の仮焼き微粉末を用いたジオポリマーセメントの硬化機構を調べ、各種性質を考察した。また、緑泥石以外の3種類の岩石を用いてジオポリマーセメントを作製する可能性の考察および仮焼き条件の検討を追加した。時間を節約するために、当初の計画として平成28年度に行う予定のジオポリマーセメントを用いたコンクリートの性能の一部についての考察をモルタルで実施した。モルタルで実施しても、ジオポリマーセメントを用いたコンクリートの性能を把握することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27-28年度に緑泥石の仮焼き微粉末と高炉スラグ微粉末の混合物を用いてジオポリマーセメントを作製しうることを明らかにした。当初の計画どおり、平成29年度にジオポリマーセメントを用いたコンクリートの各種性能を引き続き考察し、調合設計方法を提案する。しかし、開発したジオポリマーセメントの凝結時間は1.0~1.5時間しかなく、高炉スラグ微粉末を20~40%添加する必要がある。凝結時間を延長し、高炉スラグ微粉末の混合率を低減するために、引き続き緑泥石以外の岩石の使用を検討する予定である。また、仮焼き後の冷却処理方法の影響を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
中古品を修理して継続的に使用しているため、平成28年度に購入する予定だった電子天びんとスタンプミルを購入しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
ジオポリマー硬化体を養生するために、恒温恒湿機は必要である。しかし、本研究室が保有しているものは平成28年度に壊れた。故障原因の診断は時間がかかるため、平成28度に修理できなかった。平成29年度に、平成28年度の残金を利用して恒温恒湿機を修理する予定である。
|