研究課題/領域番号 |
15K14067
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
朝山 秀一 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (50120100)
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研究分担者 |
前 稔文 大分工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90318171)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造デザイン / 流体解析 / 耐風性 / 構造形態創生 / 風紋 / 海洋波 / 河床変動理論 / ラチスシェル |
研究実績の概要 |
平成28年度は、流体解析ソフト(FINE/Open with Labs)を用い、形態生成理論の異なる3種類の空間構造の風圧分布特性を解析した。 1.海洋波の生成理論に基づく屋根の風圧分布:これまでの研究により、60m×60mのスパンを持ち、上に凸な半周期のy方向の波(周期24秒)に5つの正弦波によるx方向の小波(周期2.4秒)を加えた空間構造モデルを作成し、x方向y方向それぞれの波高を変化させて鉛直荷重に対して部材が許容応力度内で最も高い剛性を示す形態を求め、その屋根面の風圧分布を検討した。解析では風速、30m/s、風向はx方向(正負)、y方向、30度、60度の場合に対して風圧分布を求めた。x方向断面では風向によらず、風圧の最大値はアーチ構造に比較して本モデルの方が大きい値を示し、y方向では逆に小さい値を示した。本モデルの場合、屋根の端部で局所的に大きな風圧を受けるが、これは屋根の小波の形状が端部で滑らかでないことが原因と考えられる。 2.風紋の生成理論に基づく屋根の風圧分布:風紋と正弦波で近似された砂丘を組合せた屋根形状を持つ同様な構造モデルを作成し、風速30m/秒の風を上記同様に作用させて風圧分布を検討した。x方向風に対し、端部から20m~60mで屋根面の凹凸によるものとみられる風圧力の低下が確認できたが、屋根端部や頂部、凹凸の大きい部分では風圧が高くなる傾向を示した。 3.河床の変動理論に基づく屋根の風圧分布:水流により形成される河床の形態が、ほぼ平坦なモデル、河床の凹凸が生じるモデル、深い凹凸のモデルの3種類を屋根に採用した場合について流体解析を行った。建物の規模と解析パラメータは上述同様である。いずれのモデルも風が最初にモデル衝突する面で高い正圧が生じ、モデルの上面では昇気流が起こり、面に負圧が生じた。また、風の一部は衝突後外周を回り、背面に吹き付けることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗状況は、概ね予定通りであったが、年度内に論文としてまとめて発表することができなかったため、やや遅れていると判断した。 現在「河床の変動理論に基づく屋根の風圧分布」の関する研究については、2017年度の国際会議IASS(International Association for Shell and Spatial Structures)のProceedings of the IASS Annual Symposium 2017“Interfaces: architecture.engineering.science”に掲載が決定している。しかし、「海洋波の生成理論に基づく屋根の風圧分布」と「風紋の生成理論に基づく屋根の風圧分布」については、まだ論文としてまとめていないので、今後早急に執筆することを計画している。 進捗がやや遅れた原因は、流体解析プログラムの使い方が難しいため、ソフトウェアの供給先のベンターのサポートを受けつつ、慎重に解析結果を検討したためと考えている。しかしながら、現在では、研究に用いた解析モデルに基づくマニュアルを研究室で完成させたので、今後、解析が容易かつ迅速になることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策としては、現在の研究成果で明らかになった屋根形状の滑らかでない部分で高い風圧が生じている点を改善し、この種の屋根の風圧を小さく抑えることが可能な形態を開発することを目指している。また、研究で実際に解析する構造を取り上げたマニュアルを完成させたため、より正確で迅速な解析が可能となったので、多くのケーススタディを行う計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
大分工業高等専門学校の分担金の旅費および謝金未使用分128,750円ついては、当初、年度内にもう一度、データ処理のために大分から東京に出張する旅費および謝金に予定していた。しかし、国際会議IASS (International Society for Shell and Spatial Structures) 2017で論文の採択が決まったため、次年度の分担金250,000円と合わせて、研究成果の論文発表の旅費にした方が、より助成金を有効に活用できると判断したことによる。また、東京電機大学側の9,650円は、データ処理の時間が想定したよりも早く終了したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
大分工業高等専門学校の分担金の旅費および謝金未使用分128,750円については、次年度の分担金250,000円と合わせて、既に採択済みの国際会議IASSの旅費(現在、航空券と宿泊予約を旅行社に依頼中)に充てる計画である。また、国内の学会発表出張旅費に充てることも計画している。東京電機大学側の9,650円は、次年度にデータ処理の謝金の一部として使用する計画である。
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