本研究は、液体除湿媒体(以降、除湿液)と透湿膜(透湿性中空糸膜)を用いることで、従来のロータ式に比べて高性能且つ超小型な除湿空調システムの実現を目指したものである。 初年度は透湿性中空糸膜を用いた実験装置の構築から着手し、中空糸膜と除湿液による除湿単独実験、再生単独実験を実施し、それぞれが空調目的で機能することを確認した。また、除湿液の流量調整によって容易に除湿容量制御が可能なことを確認した。以上より、例えば屋上に再生装置を設置し、建物内に複数のコンパクトな除湿装置を設置し、配管で除湿液を分配するシステムが実現可能となる。除湿後の希釈された除湿液は配管で再生装置に回収される。また、従来のロータ式デシカント空調システムの課題であった処理空気の除湿・冷却同時処理も確認された。 これらを踏まえて、除湿・再生に関するシミュレーションを実施し、概ね実験を再現した為、計算上で除湿-再生をループとしたトータルな除湿空調システムを検討した。検討より本研究で用いた実験システムでは、除湿液濃度が30%程度で一般空調を対象とした除湿システムが構築できることを確認した。同シミュレーションは中空糸膜表裏の等価水蒸気分圧差を駆動力として、透湿係数によって計算を行っており、膜と液、膜と空気の界面は理論値、膜の拡散係数はメーカー値(一定値)によった。 このシミュレーションの精度を確保するため、最終年度には膜の拡散係数を同定することを目的として、除湿液の温度、濃度を変化させた実験を実施した。その結果、水蒸気分圧差を駆動力とした膜の透湿性能には温度依存性が存在すると推定される結果を得た。このことから、解析では水蒸気分圧差と温度をパラメータとした駆動力を導入する必要があると考えられるが、今後の課題である。今研究により解析精度については更に検討が必要だが、極めて小型で制御性に優れた除湿システムの実現可能性が確認された。
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