研究課題/領域番号 |
15K14075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高取 愛子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10335185)
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研究分担者 |
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生活居住空間 / 照明意匠 / 高効率照明 / セントラル・ライティング / 半導体光源 / 蛍光体 |
研究実績の概要 |
本研究では,発光効率や素子寿命の観点から優れている半導体光源を用いて,照明と建築意匠との相関に主眼をおいた新規照明システム,すなわち,セントラル・ライティング・システム(CLS)の可能性を提案している。 本システムは,中央集中管理された励起光源である半導体固体光源と,光ファイバを用いた励起光の遠隔地への配光伝送路,および,離隔設置された配光部から構成する照明システムであり,本研究において,各要素技術の基礎的開発を行っている。 初年度は,本研究で独自に開発する光源・配光ユニットを,住空間へ適応することを想定し,その基本的構成について示すとともに,CLS導入によって期待できる特徴についてまとめた。つぎに,生活居住空間に適用することを前提とし,実際に作製した実機を用いて,CLSが十分な照度を有し,なおかつ高効率に機能することを確認した。さらに,造形や質感調整において高い自由度を有するガラスや磁器素材に着目し,配光部の意匠への高付加価値化を目指した。その際,蛍光体粒子のガラス材や釉薬への添加時の課題点を整理し,熱特性および発光特性の安定化に向けた検討を行った。 なお,照度や省エネなどの技術的観点からは,実用化に向けたそれぞれの要素開発は未だ途上にありつつも,本システムは,これまでの照明計画の基本コンセプトを一新する可能性を有するものであり,シンプルな構造で意匠性の高い照明システムの実現に貢献できる一つの手法として有用であると考える。とりわけ,今後さらにLD光源自身の高効率化,高出力化が進めば,大きな照度を必要とする照明用途への応用も可能になると期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究グループは,異なる専門性を持つ研究者によって構成されている。本研究において,それぞれの専門性を活かして個別の課題に取り組みつつも,互いが緊密に連携できる体制をとっていることから,これまでのところ,進捗は概ね順調と言える。 研究代表者である高取愛子は,建築計画の心理・生理的効果を考慮した生活空間の設計実務に携わる立場より,主として建築との相関に基づく照明設備や意匠の在り方への新規提案や課題点の抽出を行い,本研究を取り纏めている。共同研究者である小島一信は,窒化物半導体を用いた紫外~可視波長領域における、高効率半導体光源の原理的性能向上に関する研究を推進してきた経歴を活かし,特に、半導体レーザ、すなわちCLSにおける励起光源についての知識・経験を元に,主として高効率と高出力を両立する新しい原理で発光する半導体光デバイスの開発に従事している。また,研究協力者である改井陽一郎は,器具作製,実験補助者として本研究に全般的に従事している。当初予期していなかった課題,すなわち,CLSにおける蛍光体粒子を用いた配光部の検討においては,大石昌嗣 ,塩見昌平に協力を求め,既に一定の成果を出しつつある。 以上のように,我々は,これまで遠く離れていた、最先端の「半導体光源技術」と「建築設計技術」の融合を、本研究を通して実現し、住み手が求める快適性に根ざした照明計画を、CLSに立脚して実現したいという共通の想いのもと,研究に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果によって,各要素技術において次のような課題を見出したのも,本研究の成果と言える。これら課題点を,今後の研究方針としたい。 (1)LDモジュールの発光効率の改善。とりわけ,LD自身の高効率化,(2)供給電力の変換制御及び回路の新規開発(LDモジュールの高効率化),(3)光ファイバのフレキシブルで安価な分岐技術の開発,(4)配光部での調光およびオン・オフ機能の設計,配光部での調光及び光量調整機能の設計(LDモジュールの高機能化),(5)配光部のデザイン開発 ,(6) 蛍光体のさらなる安定化
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,当該年度に研究を予定していた,「光源の強制冷却の検討」を次年度に繰り越したため,購入予定であった「冷凍機」の執行が延期になったところが大きな原因となる。 また,同じく研究項目「配光部の作製」の一部についても,次年度への繰り越しとなり,謝金・人件費も執行がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前項の「冷凍機」および「人件費」については,そのまま次年度の執行を予定している。
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