研究課題/領域番号 |
15K14076
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 俊夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80182575)
|
研究分担者 |
竹村 明久 摂南大学, 理工学部, 講師 (70584689)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 嗅覚 / 順応 / クロスモダリティーマッチング / 音の周波数 / 音の大きさ / ME法 / 嗅覚モデル / 線分長 |
研究実績の概要 |
ステップ変動下の嗅覚応答への純音の大きさ・周波数マッチングと線分法、ME法、言語評定尺度法の適用について検討を行った。具体的には以下の通りである。 酢酸エチルを対象として、一定濃度のボンベから発生させた臭気を一定量の新鮮空気で希釈し、被験者の鼻に吹き付けて定常暴露させた。対象としたモダリティーは、純音の大きさと周波数、線分の長さ感、数値感(ME法)、言語評定尺度とした。純音の大きさ感では440Hzの純音を用い、長さ感では被験者に臭気強度に応じた線分を引かせることで、評価をさせた。長さ感と言語評定尺度以外では、modulusを決めて提示し、相対的な評価をさせた。実験条件としては、ステップ的な濃度変化とし、3段階の濃度に対して、感覚の程度を測定した。その結果、臭気強度の時間応答には、被験者によって個人的な特性があり、指数的に臭気強度が減衰するタイプ、時間的にある周期で大きな変化をするタイプ、時間的にあまり減衰が見られないタイプのさんタイプがあることがわかった。モダリティーによる差異についてみると、その差は小さいものの、若干の差異があり、音のモダリティーについてはやや高めの臭気強度評価で推移することが明らかになった。一方、数値感、長さ感のモダリティーについては、臭気強度の言語評定尺度との合致度は高く、音のモダリティーよりも優れていることが明らかになった。しかし、規準化の仕方によっては、音のモダリティーの適用性も高くできると考えられるため、今後も、検討を進める必要があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、長さ感の測定には、古典的なフィンガースパン法やスライド式のボリュームを用いた電気的な出力方法を考えていたが、結果の記録方法とデータ処理の利便性を考慮して、線分法を用いる実験とした。結果的には、実験は非常に問題なく進めることができ、得られた結果も満足のいくものであった。当初予定をしていなかった、数値感に基づくME法の実験も行うことができ、本研究は順調に進展しているものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の課題に対して、大学院生1名と学部生1名を専属で担当させ、今後の研究を強力に推進する。 ■種々の濃度変動下の嗅覚応答へのマッチングの適用と嗅覚モデルの構築:酢酸エチルの濃度を様々なパターンで変動させて、被験者に曝露し、臭気強度の時間変動を様々なモダリティーで測定を行う。対象とするモダリティーは、平成27年度で検討した純音の大きさ、周波数とし、基準データとして言語評定尺度法も併用する。測定した嗅覚応答の時変動特性に対して、パルス応答をベースにした嗅覚モデルの適用を行うことで、嗅覚回復時のインパルス関数についての同定を行う。ただし、ここでのパルス応答では、平均的な応答関数のみならず、個人特性を考慮した関数についても同定を試みる。回復過程においては、断続的評価となる言語評定尺度より、連続的評価の可能な音の周波数と大きさの方が実験上のメリットが大きいものと言える。 ■音の大きさ・高さ感、明るさ感、長さ感の定常時クロスモダリティーマッチング:嗅覚を用いず、線分法を基準として、音の大きさ感、高さ感、視野の明るさなどの定常時の感覚に対してマッチングを行う。この実験は、各モダリティーの関係を定量的に明確にし、嗅覚のモダリティーマッチングの結果を解析する上で重要な参考データとなることを期待している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初音の測定用として、精密騒音計の購入を計画していたが、他費用による購入ができ、被験者の謝金についても、他の資金を利用することができたことから、次年度への繰越し予算が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度は臭気を曝露するための実験装置の改修と改良を計画しており、そのために繰り越した予算を使用する。この装置の改修は申請時には予測していなかったものではあるが、実験を継続する上では必要不可欠なものである。
|