研究課題/領域番号 |
15K14085
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
田中 直人 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60248169)
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研究分担者 |
古川 恵美 畿央大学, 教育学部, 准教授 (20636732)
岩田 三千子 摂南大学, 理工学部, 教授 (70288968)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発達障害児 / 環境刺激 / 構造化 / 生活環境 |
研究実績の概要 |
本研究は発達障害(児)をテーマとしており、療育・教育分野などの多岐分野との連携に加え、より実践的な研究アプローチである為、児童発達支援センターなどの療育実践施設の協力が不可欠であった。その為、本年度は施設訪問を含めた関係者との打合せを精力的に実施し、研究協力体制を構築した。 施設訪問時には施設職員へのヒアリングを実施し、現状施設の課題から、次年度以降に実施する検証実験の研究フレームの検討を行った。 加え、協力施設を通じて発達障害を持つ子どもとその保護者に対し、本研究の趣旨説明及び協力依頼を行い、承諾を得られた保護者及び発達障害を持つ子どもに対し、「色に対するイメージ調査」と「ハウスパズルを用いた空間認知調査」を実施した。調査を個別調査とすることにより、各保護者に対して具体的なヒアリングが可能であった。これらの調査により色に関しては、保護者が考える子どもの色イメージ・嗜好と実際に子どもが持っている色イメージ・嗜好とでは差異があることを明らかにした。空間認知調査では、「領域優位型(ライン沿い型・面展開型)と「事物優位型」があることを明らかにした。個別差が大きいとされる発達障害を持つ子どもの特性であるが、本研究では個別調査の手法を用いたことにより、包括的な調査手法に比して多くの時間を要したが、個別の事象・特性を踏まえた有用な知見を得ることができた。これらの成果を日本建築学会大会に論文投稿した。 上記の一連の取組成果を踏まえ、次年度以降の具体的な研究方法の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で取り扱う発達障害(児)は、社会的にもその配慮の必要性が指摘されているが、関連分野が多岐に渡ることに加え、倫理面での配慮、更には子どもを対象とすることから、より慎重な研究推進が必要である。その為、研究協力者及び多岐分野の研究者などに対する十分な説明を行い、本研究への理解を頂き、研究協力体制を構築する為に時間を要したが、逆に、今後の研究推進に向けての課題解決が図られ次年度以降はスムーズな調査実施が可能である。 又、本年度に実施した「色に対するイメージ調査」と「ハウスパズルを用いた空間認知調査」の調査計画時に、発達障害を持つ子ともを対象とした調査において想定される問題点を抽出すると共にこれらへの対応策を関連分野研究者や研究協力者を含めて議論・検討し、調査を実施した。 調査後には、調査時の問題点の有無を確認・共有し、その都度対応策を検討した。これら一連の取組は発達障害を持つ子どもを対象とした調査ノウハウの蓄積となり、次年度以降の調査においても活用することができる。これら次年度以降の調査を視野に入れた、慎重な調査計画の作成及び実施に当初計画より時間を要した為、当初計画では本年度実施予定であった海外先進事例施設を次年度に実施するという研究スケジュールの調整を行った。海外先進事例視察の実施は次年度としたが、国内を含めた先進事例に関する資料収集などは実施している。加え、本年度の調査計画時の打合せ時に、次年度実施する療育実践施設での環境導入調査の概略議論を進めており、海外先進事例視察時期の調整は本研究における全体研究スケジュールには大きく影響しない為、次年度についても当初計画に基づき研究を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に時間を費やして研究協力体制を構築したことにより、次年度以降はスムーズな調査実施が可能である。 具体的な取り組みとして、①本年度に実施できなかった海外先進事例調査、②本年度に協力関係を構築できた療育実践施設での長期的な環境導入とその効果の評価、③今年度に協力を得られた保護者の方々との継続的な面談により、日常生活におけるより具体的な環境的問題点の抽出と改善策の検討を予定している。海外先進事例調査では、①療育プログラムの進捗を考慮した物理的環境配慮、②空間のわかりやすさの為の視覚的・物理的配慮、③環境刺激への物理的な取り組み、④カームダウンなど、落ち着き空間とその手法に関する事例を収集する。 療育実践施設での長期的な環境導入とその効果の評価では海外先進事例視察結果に加え、これまでの調査から得られた知見に基づき、特に色の効果を用いた空間のわかりやすさ、個別領域とカームダウンの環境形態の視点から、実際の療育空間へ導入する物理的環境要素を決定し、本年度に協力関係を構築できた療育実践施設での長期的な環境導入を行う。導入効果の評価については、施設職員並びに保護者の視点に加え、環境導入前後における観察調査など、多角的な評価を行う。 保護者の方々との継続的な面談では療育施設等への入学期からの時間的変化と療育の進捗状況の視点から日常生活における具体的な環境的問題点の抽出及びその変化に関する個別ヒアリングを実施し、子ども個々の特性及び生活習慣・環境の差異を考慮した改善策の検討を行う。 本年度に得られた多岐分野に渡る協力者との連携を強化しつつ、適宜、打合せを行い、慎重且つ効率的に研究を推進する。又、本年度の調査実績を基に、次年度以降の調査実施に関して想定される問題点を抽出し事前に対策を検討しながら研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で取り扱う発達障害(児)は、社会的にその配慮の必要性があり、また関連分野が多岐に渡るため、倫理面での慎重な配慮をふまえた研究推進が必要である。そこで当初の研究計画以上に、多岐分野の研究者への説明の機会を設け、本研究への理解と協力を求めた。加え、療育実践施設に対しては訪問による研究趣旨の説明を行うなど、本年度は、関係者間の研究協力体制を構築することを優先して作業を進めた。 発達障害を持つ子どもとその保護者を対象とした調査では、子どもへの心理的ストレスをいかに無くし、且つ効率的に有効なデータを採取するか、関係者間で慎重な議論を行い、調査項目・所要時間・調査環境・スタッフ体制などについて数回にわたる見直しを行った。結果、色のイメージに関する調査などを実施したが、当初、本年度に予定していた海外視察に関する情報収集等は進めたが海外での施設調査は実施していない。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に研究協力体制を確立できたことにより、次年度は、よりスムーズな研究推進が行われることが期待される。本年度の計画であった海外先進事例視察を実現させる。この視察により、①療育プログラムの進捗を考慮した物理的環境配慮、②空間のわかりやすさの為の視覚的・物理的配慮、③環境刺激への物理的な取り組み、④カームダウンなど、落ち着き空間とその手法に関する事例を収集する。 上記海外先進事例視察の結果とこれまでの調査結果から、実際の療育空間へ導入する物理的環境要素を決定し、本年度に協力関係を構築できた療育実践施設での長期的な環境導入を行う。これら環境導入事物の製作・運搬・設置に加え、本年度に協力を得られた保護者の方々との継続的な面談を実施し、療育施設等への入学期からの時間的変化と療育の進捗状況の視点から日常生活における具体的な環境的問題点の抽出及びその変化と改善策を図る実験等に使用する。
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