「飛鳥シティ・リージョン」を対象に、都市と農村を一体的な計画単位とするCity Regionの有益性を実証することを目標として、広域圏の意思決定手法(ガバナンス・システム)に関する実践的検証を推進した。具体的には、当該地域において各種地域組織および産学官医連携組織「MBTコンソーシアム」と協働して基礎自治体の範域を越えたまちづくりの実践を行ない、その参与観察を進めるなかで、以下の三点に関する成果を得た。 (1)「中心市街地への都市機能の集約化」に関しては、試験的小規模事業(パイロット・プロジェクト)の実施を担いつつ、既存組織の広域的連携のための政治的アリーナを提供し、かつ地域における「まちづくり知」の蓄積を担うシンクタンクとして機能する、広域型TMO(Town Management Organization)の有効性を示すとともに課題を抽出した。 (2)「まちなみ保存地区でのまちなか医療の展開」に関しては、地域の社会関係資本の触媒として機能する小規模拠点の活用や、自然発生的な住民自身による健康行動の支援などを通した、施設整備にとどまらないまちなかの「健康の場づくり」の重要性を明らかにした。 (3)「医療と観光のイノベーション」に関しては、医療観光の動向を整理したうえで、その課題として「拠点に依拠した“点”型医療観光」から「“まち=面”型医療観光」への転換の必要性を示した。またその具体的な展開の方向として、地域の農作物を活用した園芸療法など「未病を治す東洋的医療観光」と、地域の観光資源を活用した長期滞在型高度医療提供など「疾病を治療する西洋的医療観光」があることを示し、それぞれの成立条件を整理した。
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