本研究では、在来産業のうち酒造業を取り上げ、その近代化が都市形成に与えた影響を日中で比較した。近世には都市の中心部で、住・工・商一体の複合的施設を拠点として小規模に成立した。複数事業者が経営を行った場合でも、近代化の過程で統合され、住・工・商が空間的に分離され、大規模化したことは日中で共通していた。 日本の酒造業の大規模化には限界があったが,1990年代以降の中国では巨大化し、都市内に酒造関係の小都市を成立させた宜賓や、都市全体を酒造業が占拠した茅台のような事例も確認された。一方で、良質な原料の確保に加え、ブランド価値の維持が重要だったため、創業地に本拠を置き続けるという点は共通していた。
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