これまでの研究成果を、A.時間軸における把握、B.空間軸における把握、C.歴史軸における把握、以上、大別して3つの観点からまとめ、そのために必要は補足調査を実施しながら、関連データの総合的検討を行った。具体的には、Aについては、これまでの定点観測記録データを「年周期」と「日周期」の観点からとりまとめた。Bとしては善福寺池の定点観測地点からの「サウンドホライズンマップ」、善福寺池と井草八幡宮を含めたエリアを対象とした「サウンドイベントマップ」等を作成、Cについては台風21号による大雨で地下水位が上昇した結果、約半世紀ぶりに池の畔に出現した湧水の観察記録等を行った。 そうした活動を通じて、サウンドスケープとして音環境は「物理的な現象」に留まらず、それをきく人々との関係(生きられた環境)として立ち現れてくること。また、サウンドスケープとして把握された音環境には、当該地域で生活を営む人々の文化性・主体性が色濃く反映されることを実証することができた。つまり、物理量的計測によって得られたデータと、調査員による観察調査、もしくは聞き取り調査から得た質的データを比較することによって、現場の音風景の実態を多面的・立体的に把握していくことができた。 さらに、これまでの研究成果についての地元への還元を目的として、旧井荻村時代にまちづくりの拠点として建てられた井荻会館を会場としたシンポジウム「音の風景と故郷づくり・まちづくり」を開催し、そのために必要な音声動画記録を編集した。
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