平安時代前期における工匠組織の変遷に関する研究

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K14101
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 小岩 正樹 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20434285)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 日本建築史 / 建築生産史 / 平安時代

研究実績の概要

本研究は、平安時代前期に相当する9世紀から10世紀を対象とし、前後代の奈良時代や平安時代後期との比較検討のうえ、建築生産史から見た造営状況の特徴について明らかにするものである。
平安時代の建築生産像は、10世紀後半以降の平安後期に相当する摂関期・院政期のものが目立ち、対する平安前期は過渡的段階として外形的な把握にとどまるのが現状である。したがって、本研究はその変遷を導いた動的要因の把握を念頭に据え、人物や組織の参画、機会などの各点をもとに、周辺史料を収集して、造営形態の実状を複合的に明らかにすることを目的とする。
研究は全体として3年の期間を計画し、文献史料をもとに進める。造営組織や実際の造営事例について検討することを対象に、史料の確認と収集、解読、分析を行うことを、基本的な研究方法とする。
初年度にあたる平成27年度は、平安時代前期の建築造営に関する事例収集とその整理に努めた。収集された事項は、既往研究において挙げられている事例を含め、組織や人物、造営の実施事例の状況が窺えるものであり、9世紀の造営事情を概観するため、既往研究と史料との渉猟を行った。ただし、平安時代前期の中心的課題は中央での官司整理と再編であると示したが、これに関する検討のみでは建築生産史として限界があるため、平安時代後期の摂関期・院政期に見られる多くの活発な造営事例も適宜把握し、理解の補助となる情報として利用することで検証してゆく。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の全体計画のうち、初年度に予定した史料の収集および確認をおおむね進めたため、進行状況は順調と判断しうる。

今後の研究の推進方策

本年度の成果を踏まえて、残る2年の計画としては、史料内容の読解と分析を行ってゆく。史料の性格上、ふたつの推進方法が考えられるため、それぞれを平成28年度と29年度に割り当てる。平成28年度は造営官司の状況に関する研究、平成29年度は寺院内における造営状況に関する研究とする。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた予算計画と比べ、旅費および人件費・謝金からの支出が控えられたため。旅費については、史料の確認および入手を予定していたところ、排印本などから得られたことにより、人件費・謝金についても、同様に活字化されている史料が多いために削減することが可能であったため。

次年度使用額の使用計画

次年度以降に、史料の内容に関わる調査のための旅費に充填すること、および必要な史料整理に人件費を充てることを計画している。