研究課題
挑戦的萌芽研究
平安時代前期に相当する9世紀から10世紀を対象に、建築生産史から見た造営状況の特徴について、前時代の奈良時代や後継の平安時代後期との比較検討のうえ、明らかにすることを試みた。その変遷を導いた動的要因の把握を念頭に据え、主に造営を所管した官営組織と、各寺院に設けられた造営部門組織を対象として、人物や組織の参画、機会などの各点をもとに、周辺史料を収集して、造営形態の実情について複合的に考察した。
建築学
本研究は、奈良時代から平安時代への変遷を目標とした、建築史分野におけるひとつのミッシングリンクである。平安時代の建築生産については、史料的制約のために多くが不明ながらも、特に専門的に携わる人物や組織の活動については一定の既往研究の蓄積がある。しかし、そのような平安時代の建築生産像の多くは、平安貴族の隆盛によって造営活動が活発であった10世紀以降の平安時代後期に相当するものであるため、本研究では、従来はあまり述べられることのなかった平安時代前期を対象として研究を行った点に第一の社会的意義がある。