本研究では、二段階結晶化を示すCu-Ge-Teと一段階結晶化を示すGeTeを用いた多値記録相変化メモリ素子の創製に挑戦し、本期間において以下の知見を得た。 1.二段階結晶化を示すCu-Ge-Teと一段階結晶化を示すGeTeの最適組成化 最適Cu-Ge-Te組成を検討した結果、Ge28.8Cu23.4Te47.8が、GeTeの結晶化温度よりも高い温度領域、即ち、第一結晶化温度:250℃および第二結晶化温度:325℃を示す事が分かった。更に、アモルファス相の抵抗値は10^7 Ω、第一結晶化後の抵抗値は10^3 Ω、第二結晶化後の抵抗値は10^2 Ωであった。その結果、GeTeとGe28.8Cu23.4Te47.8を二層に積層した場合、材料的には4値の抵抗状態を実現でき、それぞれの抵抗状態の間には1桁以上の抵抗差を持たせることが出来る事が分かった。 2.各層の繰り返し特性 本実験では、各層の繰り返し特性を評価した。デバイス作製には、先ずフォトリソグラフを用い、GeTe/電極間の接触サイズを10μm×10μmとした。本デバイスではGeTe層は10^2回以上の良好な繰り返し特性を示したが、セット時の抵抗値のバラツキが大きく(1桁以上)、構造の最適化、特に、接触サイズ微細化を試みた。フォトリソグラフとフォーカスイオンビーム(FIB)を駆使し、50nm厚さの電極層上に絶縁層を成膜し、その後、FIBにてSiO2/電極層にφ500nmの円柱状の穴をあけ、そこに相変化材料を成膜する事で電極接触サイズを最小化した。その結果、Ge-Cu-Te層は10^4回の長期繰り返し性を示した。 以上より、4値を示す多値記録相変化メモリ素子の基礎知見を得る事ができた。また、本実験で用いたGe-Cu-Te系PCRAMデバイス構造を用い、シナプス挙動を模したデータ消去過程を実現する事が可能である事が分かった。
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