NdFe12Nxは高磁化、高い異方性磁界を有し、永久磁石材料としてはポテンシャルが高い。本物質を永久磁石材料として使用するためには、高保磁力化が求められる。そのためにはまず、現在副相として析出が避けられない、軟磁性相であるa-Feの析出を抑制することが必須である。そこで、ThMn12構造を安定化させるTiを少量添加することでa-Feの析出抑制を前年から引き続き取り組んだ。 TEM観察結果より、a-Feは下地層の直上に析出しやすいことが分かっている。そのため、2つのa-Feを抑制する方法を試みた。数nmのTiを下地層の上に堆積した後、NdFe12を堆積する、もしくはTiをコスパッタしNdFe11Tiとする方法である。前者の方法ではa-Feを抑制することは出来なかったが、後者の方法ではa-Feの析出がない試料を作成することに成功した。しかしながら、磁化測定ではゼロ磁場近傍における困難方向の磁化曲線の立ち上がりが観測された。 この原因を調べるためにTEMによる微細組織観察と極点図を利用することによる結晶の方位分布測定を試みた。TEMでは、磁化の立ち上がりを説明出来る様な結晶方位の違いなどを悪人することが出来なかった。XRD測定ではThMn12構造の場合2qが37°付近に(002)と(031)からの回折がオーバーラップしており、面直XRDのみからでは判断が難しい。一方で、(002)の極点図をとることで、(002)が(031)かを判断することが出来る。その結果、Tiを置換した試料では37°付近の回折ピークには(002)と(031)が混在することが分かった。つまり、容易軸方向は、面直方向と、面直方向から60°傾いた方向、いずれにも分布していることを意味する。よって、面内方向の磁化曲線のゼロ磁場付近で立ち上がる原因はこの磁化容易方向の分布によるものと考えられる。
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