研究実績の概要 |
本研究では、幅広い材料設計の自由度を持つ層状複合アニオン化合物であるLnOBiCh2(Ln: La-Sm, Ch:S,Se,Te)のBi-Chが形成する結合状態を制御し、さらにその界面を利用した新規材料の創出を目指し、LnOBiCh2ナノシートの合成と評価を行う。前年度は、種々の単結晶合成法や電子伝導評価法を確立し、さらに溶媒中で超音波処理することにより、LaOBiS2のナノシート化に成功した。本年度は、バルク体および単結晶の希土類元素の結合状態を評価し、その伝導特性へとの影響を明らかにした。具体的には、CeOBiS2は、化学ドープを行わない状態でも1.2Kで超伝導体になることをバルク体および単結晶で確認し、Ceの価数の変化によりBi-Chの価数や結合状態が変化することで極低温で超伝導体になると考察した。その一方、PrOBiS2では0.13Kまで超伝導転移を示さず、Prの価数は3価であることが確かめられた。また、剥離したナノシートは、LaOBiS2の結晶構造および組成を大きく変化させることなく生成し、その厚さは結晶構造の2-4層のナノシートであることを確認した。Bi-Sの結合が超音波処理によって切れることで、ナノシートが生成したと考えられる。現時点で、ナノシートの単体の伝導特性は評価するに至らなく、ナノシート堆積での厚膜での評価を現在行っている。また、元素置換を行うことで、カドミウム添加した新規化合物や、ユーロピウム酸硫化物単結晶、新規インジウム酸硫化物の合成に成功した。本年度の成果は、論文3編として発表された。
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