中~遠赤外線の波長である4~10μmのサイズで加工した薄膜ヒーターを作成すれば、高温発光体における光の緩衝効果が得られ、波長制御した赤外線光源、エネルギー効率の向上、角度依存性制御などが実現し、高温温度計やセンサーなど様々な応用が期待される。本研究ではその基礎技術の確立を目指した。今年度は、昨年度に引き続き大気中で高温に耐える材料(耐火物)で薄膜を作製し、μmスケール以下の精度でパターニング加工を行った。具体的には、より高温に耐える材料であるMoSi2をマグネトロンスパッタで作製し、反応性イオンエッチングによるパターニングの条件を決定した。Mo-Si系には様々な組成のものがあり、製膜条件によってMoSi2以外のものもできてしまうが、室温基板上に製膜してからアニールすることにより多結晶性のMoSi2がほぼ単一相の薄膜として得られた。パターニングにはレーザーフォトリソグラフィを用い、CF4プラズマエッチングを適切な条件を用いて行うことにより目的の加工精度が得られた。発光特性を赤外分光器を改造した装置で測定し、ほぼ設計通りの特性を得た。測定には、サファイヤ基板上にMoSi2を形成した後にAl2O3をスパッタし、さらにその上に成長したMoSi2薄膜を微細加工することにより基板の発光を抑えることに成功した。パターン化していない試料を黒体輻射にフィッティングすることにより約1000℃以下での安定動作が行えていることがわかった。さらに温度を上げると空気中での酸化により劣化することもわかった。設計・プロセスの精密化により実用を目指すこと、酸素を遮断するコーティング材料を探索してさらに耐熱温度を向上させることが課題であることがわかった。
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