研究課題
本研究では我々が手掛けてきたオングストロームビーム電子回折(ABED)法を酸化物ガラス(あるいはアモルファス酸化物)に適用し、特に中範囲秩序構造を特徴づけると言われている第一シャープ回折ピーク(FSDP)に注目した解析を行い、空間的に分離した構造情報を得ることを目標としている。今年度は、まず酸化物特有の低散乱角側に出現するFSDPを明瞭に撮影するため、特注の3.5ミクロンの集束絞りを作製した。その結果、集束角をこれまでより大幅に小さくすることができ、透過・回折ビームを格段にシャープにすることができた。この手法を用いて二酸化シリコン(SiO2)ガラスの局所領域からABEDパターンを撮影したところ、FSDPを含むすべてのスポットが明瞭に観察され、高い精度でFSDPの逆空間における位置の議論が可能となった。さらに、本手法をナノスケール不均一性の存在が以前から議論されてきているアモルファス一酸化シリコン(SiO)にも適用した。アモルファスSiOから得られた高散乱角環状暗視野STEM像において観察されたナノスケールの明るい領域、暗い領域、およびその界面からABEDパターンを撮影した。明るい領域からはアモルファスSi的なパターン、暗い領域からはアモルファスSiO2的なパターンが得られ、さらに界面からはどちらによっても説明できない特徴的なパターンが得られた。これらの情報を考慮した原子構造モデルを計算機手法により作製し、放射光X線回折の結果にフィットさせた。これにより、局所・大域の両方の実験結果を満足する構造モデルを構築できた。
1: 当初の計画以上に進展している
新たな極小集束絞りを設計・作製し、予定していたSiO2ガラスから明瞭な回折パターンを撮影できただけでなく、不均一なアモルファスSiOにも適用して当初の計画以上の有益な成果を得ることができた。
今後はSiOに比べ均一であるSiO2における構造の揺らぎ、空間分布等を調べていく予定である。比較的均一な構造での構造揺らぎやその空間分布の観察はさらに困難であると予想されるが、今年度SiOで得られた多くのノウハウを生かして研究を進めていく予定である。
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Nature Communications
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