本研究は、セラミックスの構造と機能に関する原子シミュレーションを、従来より格段に高い計算精度で行うため、情報科学を活用した原子間ポテンシャルの開発を目指す。脳神経系の情報処理機構を模した数理モデル(ニューラルネットワーク)に基づき、第一原理計算と同精度の原子シミュレーションを実現する原子間ポテンシャルを開発する。本年度は、昨年度に構築した自作のプログラムをもとに、ニューラルネットワークの学習アルゴリズムの確立と学習効率の向上に取り組んだ。とくに、昨年度までの検討で、目標とするエネルギー精度(10^-3 eV/atom)を達成するための最適化アルゴリズムの探索が課題であったため、この点を重点的に検討した。 学習の際に、ニューラルネットワークのニューロン間の重みを最適化するため、本研究では、既往研究で用いられている最急降下法ではなく、共役勾配法の適用を検討した。第一原理計算により、異なる種類の多様な構造の計算を多数行い、それらの全エネルギーを学習データもしくはテストデータとした。データ数としては2000以上のデータセットを作成した。最急降下法に比べて共役勾配法は、収束までの最適化サイクル回数を大幅に低減でき、最適化までの計算時間も大幅に短縮できることがわかった。しかし、エネルギー精度は10^-3 eV/atomを切ることができなかった。そこで、共役勾配法に焼きなまし法を加えたアルゴリズムを用いて検討したところ、10^-3 eV/atomのエネルギー精度を達成できることがわかった。
|