研究課題/領域番号 |
15K14126
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小俣 孝久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80267640)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 燃料電池 / セラミックス / 新エネルギー / 先端機能デバイス |
研究実績の概要 |
平成27年度は、酸溶液中でのイオン交換によりプロトン伝導性を発現するNaNbWO6をAP置換処理し、これまでガラスでのみで観察されていたAP置換が、結晶材料に対しても有効な方法であることの実証を試みた。酸溶液中でのイオン交換と類似の、比較的低温でAP置換を行うため、カソード材料にSn-In共晶(48Sn-52In, 共晶点:118℃)を用いた。NaNbWO6は固相反応法により作製した粉末をスパークプラズマ焼結し、理論密度の98.9%の高密度焼結体を作製した。この焼結体を5%H2-95%N2中、140℃、30Vの条件で9時間AP置換処理し、80℃の5M-HNO3 aq. 中で12時間還流してイオン交換したNa0.36H0.64NbWO6と比較した。AP置換法によりアノードから深さ60μmまではNa濃度が減少し、OH濃度は増大した。焼結体のアノード側では、通常のイオン交換と同様に正方晶におけるa軸の伸長とc軸の短縮が認められた。これらの結果は、NaNbWO6焼結体においてAP置換が進行していることを示しており、AP置換法はアルカリイオン伝導性を有し、かつ、プロトン化後にはプロトン伝導性を示す物質に一般的に適用可能な方法であることを示した。しかしながら、AP置換により注入されたプロトンによるOH伸縮振動は3560cm-1に位置し、強いOH結合によりH+の移動度は小さかった。さらに、NaNbWO6は含水素雰囲気でのAP置換によりW6+からW5+への還元も同時に進行し電子伝導性が発現するため、アノードからカソードにかけて電子伝導のパスが一旦形成されると、Na+イオン伝導の輸率が大きく減少しAP置換の進行が著しく妨げられた。このため、AP置換はアノードから約60μm以内の領域でのみ進行し、焼結体全体にわたってAP置換することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来300℃以上の高温で行っていたAP置換を低温でも可能とするカソード材料を検討し、Sn-In共晶(48Sn-52In, 共晶点:118℃)では排出されたNaを溶解し、120℃以上でのAP置換に十分使用できることを明らかにしている。アノード材料は高温AP置換の時と同様にPd薄膜で十分対応できることを明らかにしている。さらに、NaNbWO6の高密度焼結体において、AP置換によりNa濃度が減少した領域でのOH濃度の増大、Na+→H+置換による結晶構造の変化などを観測し、結晶材料においてもガラス材料同様に電気化学的AP置換が進行することを明らかにしているので、研究計画全体の進捗としてはほぼ計画通り進行している。。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のうち平成27年度に計画してい項目は概ね終了したので、平成28年度は、可動アルカリイオンを有し、かつ、500℃以上でも安定な各種の結晶材料にAP置換処理を実施し、ITFCの固体電解質として供しうる新規材料を探索する。平成27年度の検討から、AP置換は含水素雰囲気中で行うなめ、還元により電子伝導を発現する物質には適さないことがわかっている。この知見をもとに、探索はケイ酸塩、リン酸塩、ジルコン酸塩などを中心に行う。
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