研究課題/領域番号 |
15K14127
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 隆史 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 技術専門職員 (00379314)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集積型金属錯体 / カプセル型構造体 / ナノ材料 / 亜鉛 / コバルト / コア-中空シェル構造体 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)様々な金属種と有機配位子から合成ができる、(2)規則正しい細孔構造を有し、大きな細孔容積を持つ、という集積型金属錯体の利点に着目し、その集積型金属錯体を鋳型として用いた新規なカプセル型構造体の合成法の開発を目指した。 本年度は硝酸亜鉛と2-メチルイミダゾールによって構成される集積型金属錯体を用いて検討した。まず、集積型金属錯体のサイズの制御を試みた。その結果、調製時の2-メチルイミダゾールの濃度によって得られる集積型金属錯体のサイズを制御できることを明らかにし、100ナノメートル程度のサイズの小さな集積型金属錯体粒子の合成に成功した。シリカ被覆は、これまでのカプセル型構造体を合成する時に用いてきた、テトラエチルオルトシリケイトの加水分解を利用する方法で行なったところ、集積型金属錯体粒子もシリカ被覆できることが分かった。シリカ被覆した集積型金属錯体を700度で焼成したところ、シリカ粒子の内部には約10ナノメートルの微粒子と中空構造がTEM観察により確認された。XRD測定からは集積型金属錯体のパターンは確認できず、酸化亜鉛のパターンが見られた。このことから、集積型金属錯体を構成する2-メチルイミダゾールは焼成によって除去され、亜鉛はシリカ粒子内部で凝集し、酸化亜鉛粒子となったことで、カプセル型構造体の合成に成功したと考えられる。さらに、金属源のみを硝酸コバルトに変えて同様の実験を試みたところ、酸化コバルトの微粒子を中空シリカ粒子に内包したカプセル型構造体の合成も可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画として、①集積型金属錯体の微粒子の合成、②シリカ被覆、③シリカ被覆集積型金属錯体微粒子の分解によるカプセル型構造体内部での微粒子生成の確認、の3点を目標としていた。硝酸亜鉛や硝酸コバルトと2-メチルイミダゾールからなる集積型金属錯体を用いることで、それぞれの目標を達成し、酸化亜鉛や酸化コバルトの微粒子を中空状のシリカ粒子に内包したカプセル型構造体の合成を達成しており、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度で得られた知見をもとに、平成28年度は他の金属への展開を行なっていく。一方で、平成27年度の研究を進めるなかで、有機配位子をテレフタル酸に変えた亜鉛の集積型金属錯体を用いた場合、うまくシリカ被覆ができないことが明らかとなった。これは集積型金属錯体のシリカ被覆時の溶液中での不安定性が原因であると考えている。そこで、有機配位子への官能基付与や、ポスト処理を行うことで集積型金属錯体の安定化を試み、有機配位子に依らないカプセル型金属錯体の合成を行い、金属源や有機配位子に依らない合成法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果が出てきた時期が遅く、予定していた学会への参加や実験補助者の雇用ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は前年度の結果をもとに学会に積極的に参加する予定である。また、新たに見つかった課題に対して集中的に取り組んでいく。
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