金属ナノ粒子を中空状の粒子に内包させたカプセル型構造体は、粒子の安定化などの観点から魅力的な構造体である。しかしながら、報告されている合成法は、手順が複雑で、また金属種によって異なり、未だ確固たる手法が開発されていない。本研究では、集積型金属錯体が様々な金属種から合成が可能で、かつ大きな細孔容積を有するという点に着目し、この集積型金属錯体を鋳型として用いた新規合成法の開発を目指した。 前年度の研究で、硝酸亜鉛と2-メチルイミダゾールから得られる集積型金属錯体を鋳型として、酸化亜鉛のナノ粒子を中空シリカ粒子に内包したカプセル型構造体の合成に成功している。本年度は、前年度に得られた合成法の適応拡大を目指し、カルボキシル基を有するトリメシン酸と硝酸銅からなる集積型金属錯体を用いて合成を検討した。その結果、前年度に得られた合成法ではシェル形成時に集積型金属錯体が分解してしまい、カプセル型構造体は得られなかった。これは、有機配位子が異なることで、溶液中での安定性が変化したためと考えられた。そこで、集積型金属錯体の表面処理を様々検討したところ、アミノ基を有するアルコキシドで処理することで、カプセル型構造体を得ることができた。集積型金属錯体粒子表面を被覆することで分解を抑制しつつ、シリカ層の形成が促進されたと考えられる。 さらに、鋳型として用いる集積型金属錯体の細孔内に金属塩を吸着させ、カプセル型構造体の合成を試みた。その結果、内包できるナノ粒子のサイズの制御に課題は残るものの、同様の合成法で白金ナノ粒子を内包したカプセル型構造体の合成に成功した。 以上の結果より、集積型金属錯体を利用することで、様々な金属ナノ粒子を内包させたカプセル型構造体が合成できることから、カプセル型構造体の利点を活かした、金属ナノ粒子の新しい用途開拓が期待される。
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