研究実績の概要 |
メタマテリアルは、電磁波の波長よりも十分小さな要素を並べた人工物質で、負の屈折や電磁波の迂回など、自然界ではあり得ない特異な電磁波応答とその人工的な制御を可能とする夢の技術である。本研究では、無機ナノシートをベースに金属―誘電体―強磁性体の超周期構造を自在に設計・構築するアーキテクトニクス研究を展開し、高次メタマテリアルの創製を目指した研究を進めた。 金属/誘電体/金属ナノシートからなる薄膜キャパシタ構造を設計・作製し、薄膜メタマテリアルの開発を行った。金属、誘電体層の膜厚を変化させた薄膜キャパシタ構造に対して電磁界シミュレーションを行い、薄膜メタマテリアルの最適素子構造を設計した。この知見に基づき、極薄ガラス上に薄膜キャパシタ構造および2次元パターン素子を作製し、特性評価を行ったところ、金属/誘電体/金属ナノシートキャパシタ構造(RuO2/Ca2Nb3O10/RuO2)では、可視~近赤外域において透磁率共鳴による負の屈折率が発現すること、誘電体層の膜厚、パターンサイズにより応答波長の制御が可能であることを確認した。 さらに、予備的な研究からTHz領域でのメタマテリアル特性が示唆されている誘電体ナノシート(LaNb2O7、(Ca,Sr)2Nb3O10)超格子構造に対して、有限要素法によるシミュレーションを行い、可視光~テラヘルツ波領域における光学応答、屈折率の制御機能などについて検討を行った。その結果、LaNb2O7/Ca,2Nb3O10超周期構造体では、THz領域で非磁性の誘電体が磁気双極子のような振舞い、実効透磁率の値を正の値だけでなく0もしくは負の値に制御できることを確認した。 現在は、プラスチック基板上に薄膜メタマテリアル構造を構築し、広帯域応答とフレキシブル性を有する透明薄膜メタマテリアルや光学メタマテリアルの屈折率制御によるクローキング技術の開発を進めている。
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