溶接において「被接合材への入熱」は品質管理上、極めて重要な因子であるが、摩擦攪拌接合(FSW)では全く明らかになっておらず、信頼できる指標がない。本研究では、FSWにおける「被接合材への入熱」をカロリメトリー法により実測し、接合因子(接合条件、被接合材、ツールの物性等)から構成された実験式を得るとともに、入熱と接合品質(攪拌部のミクロ組織・諸特性)との関連性を系統的に明らかにすることを目的としている。また、得られた結果から、FSW過程での被接合材/接合ツールへの熱配分、入熱や接合品質に及ぼす個々の接合因子の寄与度などに関する基礎知見の取得を試みる。平成28年度に得られた成果を以下に記す。 平成27年度に5083アルミニウム合金における接合入熱を実測したため、平成28年度は1100アルミニウム合金と6063アルミニウム合金における接合入熱を実測した。また、接合ツールのプローブ形状の影響についても調べた。各種アルミニウム合金における接合入熱を実測した結果、熱伝導率が高いアルミニウム合金において高い入熱値が得られる傾向が示された。また、接合ツールのプローブ径ならびにプローブ長が大きいほど、入熱は増加する傾向を示した。各種接合因子に加え、被接合材の熱伝導率を変数とする重回帰分析により入熱の実験式を求めた結果、最も入熱に対する寄与度は、接合速度、熱伝導率、ショルダ径、プローブ径、ツール回転速度、プローブ長の順に減少することが示唆された。また、攪拌部の粒径は入熱とツール回転速度の積と良好な関係を示すことが明らかとなった。さらに、6063アルミニウム合金FSW継手においては、入熱は硬さ分布における硬さ低下領域の幅、最小硬さの位置、継手引張試験における破断位置、引張強さとよい相関を示したことから、接合因子から入熱値を介して、継手の機械的特性を求められることが明らかとなった。
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