研究課題/領域番号 |
15K14139
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福島 誉史 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10374969)
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研究分担者 |
長井 千里 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 産学官連携研究員 (70718353) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 接合界面 / 気相堆積ポリイミド / SiO2 / CVD / TSV |
研究実績の概要 |
具体的内容 高分子とSiO2系材料の接合界面を評価する前に、昇温ガス脱離(TDS)分析、マイクロラマン分光法、顕微赤外分光法を組み合わせ、TEOS(テトラエトキシシラン) 由来のエトキシ基の残存、およびSi-OH とSi-H 結合の含有量を定量的に評価し、TEOSを用いた200℃の低温プラズマCVD で成膜されたSiO2 と、同じく200℃で蒸着重合されたポリイミドのそれぞれの膜物性を実験的に解析してきた。本研究で使用したSiO2膜は特にSi深穴の底部近くで表面粗れが増した。一方、本研究で使用したポリイミド膜にはポリアミド酸残基は極めて少ないことが判明し、緻密な膜質である反面、延伸等の加工を行っていないため、スピンオン膜に比べると機械的な靭性は低いことが分かった。また、キャパシタ構造を作製して電気的な実測手法により界面現象を観測し、リーク電流はSiO2膜の方が1桁低いことが判明した。
意義・重要性 高分子とSiO2系材料との接着・接合強度を高めるには、表面に凹凸を設けるアンカー効果や、密着助剤のシランカップリング剤を介する手法が常法とされてきた。本申請の学術的な特徴は、これら従来の技術を用いずに、高分子/SiO2界面の接着・接合強度を高める点にある。次世代の三次元積層型集積回路のTSV(貫通シリコン電極)絶縁膜以外の応用にも期待でき、例えばシリカフィラーを混合する半導体封止樹脂、液晶ガラスと液晶配向膜、その他メージセンサやタッチパネル、ガラスプリント基板等、ガラスと高分子を使う用途全般に展開できるため、価値が高い研究になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子材料として200℃の低温で蒸着重合させたポリイミド、SiO2系材料として低温のプラズマCVDでTEOSと酸素から成膜したSiO2を採用し、それぞれの膜質と、Si深穴に成膜した際の表面状態を定量的に評価することができた。SiO2に関しては、高温で成膜した膜に比べると表面荒れも大きく、リーク電流が大きいなどの膜質の低下を示す結果が得られたが、低温成膜ポリイミドとともに化学組成上、予想と大きく外れることは無いことが分かった。また、分子動力学的なシミュレーションにより、上記ポリイミドとSiO2の界面現象を追跡することを開始し、計算環境を整備して、パラメータを抽出した。
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今後の研究の推進方策 |
実験的な検証と並行して、分子動力学的な解析などのシミュレーションによりSiO2の密度、官能基の種類、ポリイミドの原料モノマーの極性やサイズ、反応温度などの実験的パラメータを制御して、界面現象の挙動を解析する。並行して、マイクロスクラッチ試験により、SiO2/高分子界面の接合強度を実測する。これらの結果から、低温CVDのSiO2膜と蒸着重合ポリイミドの界面に与える環境的、構造的条件を追究し、この界面の特異的な現象を実験的、計算的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の値引き交渉が円滑に進んだために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額はもともと予算が足りずに校費から支出予定であった材料費に充当する。
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