具体的内容 気相堆積高分子と200℃の低温CVDで成膜したSiO2系材料、および単結晶Siの接合界面をスクラッチ試験を用いて評価した。Arプラズマで表面処理したSiに対する気相堆積高分子の剥離検知点から剥離点を示す接合強度は、両者ともに10mN弱であった。一方、Arプラズマで表面処理したSiO2に対する気相堆積高分子の同接合強度は、それぞれ約11mN、13mNであった。Ar表面処理による接合強度の増加は、単結晶Siよりも低温CVD-SiO2の方が顕著に表れた。しかしながら、大幅な接合強度の増加が得られなかったことから、SiO2の深部までデンドリティックなアンカー効果が得られた可能性は低いことが分かった。 意義、重要性 熱機械的特性は似た特性を示すスピンオンの高温硬化ポリイミドと、低温硬化の気相堆積ポリイミドの密着性を比較し、気相堆積ポリイミドが高い密着性を示すメカニズムを解析した。スピンオン材料とは異なり、Siに開けた高アスペクト比の深い穴や三次元的な立体構造にも追従して、コンフォーマルな成膜が可能である気相堆積材料の密着性を高める研究は、今後の複雑な構造を有するデバイスの創出にも重要となる。 成果 気相堆積ポリイミドが、単結晶Siの表面に比べて、200℃の低温で成膜したSiO2表面で高い接合強度を示すメカニズムは、このSiO2膜の微細な凹凸構造(表面粗さ)に起因することが分かった。また、Arスパッタなどの物理的な粗さ増大よりも、ある程度の荒らした表面に密着助剤を供給して化学的に強固な結合を導入することが効果的であることも判明した。
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