研究課題/領域番号 |
15K14140
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西原 洋知 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80400430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハニカム / バイオミメティクス / 樹木組織 / フィルター / グラフェン |
研究実績の概要 |
H27年度はセルロースナノファイバー水分散液を一方向凍結した際の、構造規定剤としての機能に関する基礎的検討を行った。種々の多糖類を比較として用いたが、TEMPO酸化により調製したセルロース水分散液のみが、一方向凍結時に樹木の木部組織に似た微小なハニカム構造を与えることを確認した。また、単にセルロースを機械解繊して調製したセルロース水分散液からも微小ハニカムは形成されなかった。一方、TEMPO酸化セルロースにシランカップリング剤を加えて疎水性を高めた水分散液からも微小ハニカムは形成された。すなわち、ナノファイバー状の分散質の形状こそがハニカム形成の鍵であることを突き止めた。また、凍結時の温度と速度を調節することにより、ハニカム開口径を20~200μmの範囲で調節可能であることがわかった。 次に別の水分散性ポリマーとセルロースナノファイバーを混合した際の挙動に関し検討した。数種類の水分散性ポリウレタンを混合したところ、いずれの場合も微小ハニカムの形成に成功した。さらに、ポリウレタンの割合を80%まで増加させても、微小ハニカムが形成されることを確認した。すなわち、セルロースナノファイバーは強力な構造規定剤として作用し、様々な水分散性ポリマーと混合することでハニカム壁の化学的組成を自在に制御できることが明らかとなった。 さらに、酸化グラフェンとの複合化も可能であることが明らかとなった。酸化グラフェンを組み込んだ微小ハニカムは弾性特性が大幅に向上し、圧縮に対して弾性変形するハニカムモノリスの調製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
セルロースナノファイバー水分散液の構造規定剤としての基礎的な機能を概ね確認することができ、またハニカム開口径の制御可能範囲も明らかにできた。さらに、種々の水分散性ポリマーとの複合化にも成功し、酸化グラフェンを組み込んだ弾性変形する微小ハニカムの調製にも成功した。このように、当初予定していた研究内容はほぼ完璧に遂行できている。さらに、セルロースナノファイバーの構造規定剤としての機能が予想以上に優れており、第二成分を80wt%まで加えても、微小ハニカムが形成できることを見出したことには大きな意義がある。すなわち、セルロースナノファイバーを少量(約20wt%)含有さえさせれば、様々なポリマーを微小ハニカムの形に成型できる可能性が示された。また、氷晶を鋳型にする本手法の更なる可能性を探索するため、炭素繊維と酸化グラフェン水分散液の系に氷晶鋳型法を適用することで、炭素繊維上にマクロ孔をもつ酸化グラフェン膜の形成にも成功した。得られた複合材料は、物質移動に優れる電極材料として応用可能である。このように、当初の予定を超えた成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
酸化グラフェンとの複合化に関しては、酸化グラフェンが酸性であるため、含有量を増やすと溶液のpHが低下し、微小ハニカム構造が形成されないことがわかっている。そこで今後は、原料溶液のpHと氷晶鋳型法によって形成される構造との関係に関する詳細な検討を行う。pHを調製した複数の原料溶液で試料を調製し、その粘度等の物性が形成される構造に及ぼす影響を調べる。また、セルロースナノファイバーと酸化グラフェンとの相互作用を検討するため、両者のゼータ電位のpH依存性についても調べる。 また、微小ハニカム構造体を鋳型として利用することで、金属や水酸化アパタイトの微小ハニカム構造体を調製する検討も行う。これらの異なる材質で微小ハニカム構造体を構築できれば、新規の触媒担体、熱交換器、人工骨等への応用が期待できる。
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