H28年度はセルロースナノファイバーに酸化グラフェンを添加した際の、一方向凍結によって形成される構造に関する詳細な検討を行った。酸化グラフェンの添加量が20%までの場合は樹木組織に似たハニカム構造が形成されたが、それ以上の添加量になると構造が大きく乱れた。酸化グラフェンを添加するに従いpHが低下するため、pHの変化と氷晶構造との関係を次に調べた。セルロースナノファイバーにHClを添加してpHを低下させていくと、乱れた構造が形成されるようになるが、一旦酸性にした溶液にNaOHを添加して再びpHを中性付近に戻すと、ハニカム構造が形成されることがわかった。そこで、セルロースナノファイバー水分散液に酸化グラフェンを添加した後にNaOHでpHを中性に戻して一方向凍結を行ったが、この場合にはハニカムでは無くラメラ構造が形成された。一方向凍結によって形成される氷の構造は、単にpHに依存するのではなく原料溶液中の固体成分の分散状態に大きく依存することが示唆された。 また、セルロースを原料として調製される微小ハニカムモノリスのフィルターとしての応用に関する検討を開始した。凍結条件を調節することでそのチャンネル径を30μmにすれば、杉花粉を除去する低圧力損失のフィルターとなる。さらに、チャンネル径を小さくすれば、PM2.5を除去可能なフィルターとなる。様々な形態のフィルターが考えられるが、例として鼻腔充填型を想定し、機械的強度や耐水性に関する検討を行った。セルロースナノファイバーのみでは十分な機械的強度や耐水性が達成できないため、ポリウレタンや酸化グラフェンによる複合化が効果的であることが示唆された。
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