本研究では,液体中に浸漬した多結晶バルク物質へのパルスレーザー照射による非平衡な加熱・冷却プロセスを用いた新規単結晶成長手法の基礎を確立し,同手法により多次元単結晶を作製することを目的に研究を行った. 液体中に分散したナノ粒子コロイドにナノ秒パルスレーザー光を特定のエネルギー密度条件で照射することで比較的粒径の揃った“結晶性”サブミクロン球状粒子が形成される. “液中レーザー溶融法”と呼ばれる新規粒子合成手法における特異な物質の生成機構はコロイド溶液中への短パルスエネルギー照射によるナノ粒子の溶融とその後の粒子内部への非平衡な加熱・冷却過程によるものであるとされている.一方,同手法を多結晶バルク物質に応用した場合には非傾向プロセスによって再結晶化が起こり多結晶の単結晶化が起こることが期待される. 本研究ではまず,液中レーザー溶融法により作製された銀サブミクロン球状粒子を対象とし,電子後方散乱回折法によりシングルナノメートルの分解能で評価することでその内部結晶構造を調べ,粒子の形成過程について考察した.その結果,液中レーザー溶融法によるサブミクロン球状粒子の結晶成長過程は原料であるナノ粒子凝集体へのレーザー照射による溶融と,パルスの繰り返し照射に伴う融合過程によるものであることを明らかにした.サブミクロン球状粒子の粒径は照射レーザーフルエンスによってほぼ一定となることが明らかとなっているが,ナノ粒子の凝集体と形成されるサブミクロン球状粒子の粒径がほぼ等しい場合に“単結晶”粒子が形成されることを示した. 一方,バルク多結晶の単結晶化を目指したシリコン基板への同プロセスの適用では,期待した効果は得られなかった.これはレーザー照射による溶融・再結晶化が基板の結晶粒径に起因していること,さらに液体レーザー溶融法を適用した際の酸化が原因であることが示された.
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