研究課題/領域番号 |
15K14143
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065)
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研究分担者 |
内一 哲哉 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (70313038)
三木 寛之 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (80325943)
小助川 博之 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00709157)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 渦電流試験 / 炭素繊維強化プラスチック / スカーフ補修 / 自動化 / 二次元フーリエ変換 / 差動型プローブ / 電磁数値解析 / 繊維配向 |
研究実績の概要 |
本研究では、高周波渦電流を利用することにより、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の厚板積層板のスカーフ補修の自動化を目的とした、炭素繊維ラミネート積層構造の同定法の構築を目指す。本年度では以下の事項について研究を進めた。
① 二次元高速フーリエ変換による炭素繊維の配向角度検出アルゴリズムの構築 繊維配向を制御したCFRP積層平板に対し、差動型プローブを用いた渦電流試験を行い、検出コイル間の差動信号を渦電流信号として捉えた。試験片中央部の面を走査し、得られた二次元画像に対し空間フーリエ変換を行い、特定の空間周波数でフィルタリングを施して、逆フーリエ変換を行うことで、繊維の配向を同定できることを示した。このアルゴリズムを用いることで、層ごとに繊維配向方向が異なる擬似等方性CFRP積層平板であっても、切削などをすることなく、深部の炭素繊維の配向情報を得ることが可能であることを示した。 ② 渦電流浸透深さと信号強度の制御によるラミネート層間境界の検出方法の提案 CFRP積層平板を構成する各ラミネート層の境界では、下部の層の繊維が上部の層の繊維に流れる渦電流に影響を与え、境界検出の精度や、上部層の繊維配向角度の検出精度を低下させることが考えられる。ここで、周波数が高くなると渦電流の浸透深さが減少する性質を利用し、CFRP積層平板の表面近傍の繊維配向の角度とラミネート層境界を精度よく検出するため、CFRP内部の渦電流密度分布と渦電流浸透深さを磁気ベクトルポテンシャル法による電磁数値解析を用いて評価した。さらに、一層のみ配向角度が異なる層を様々な深さに含んだ積層平板の試験片を利用することで、渦電流浸透深さと周波数の関係を実測・評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では2軸直交差動型プローブを用いた高周波渦電流検査システムの作製を初年度で行う予定だったが、先に1組の差動型検出コイルを用いてラミネート積層間境界の検出方法に関する研究を進めることとした。 2軸直交差動型プローブを運用する場合、検出コイルの組み合わせが2組になるため、渦電流検査システムに必要となる差動アンプとロックインアンプがそれぞれ2つずつ必要となり、高額となる。そこで、今後、より複雑な形状にも対応できるよう、ロックインアンプを2つ導入するのではなく、2組以上の検出コイルを組み込んだブリッジ回路のそれぞれの出力を増幅する回路を作製し、汎用性の高いシステムの構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の事項について研究を進め、最終的に研究成果を総括し、課題の達成を目指す。 ① 多軸差動型プローブを用いた高周波渦電流検査システムの作製 4ケ以上の検出コイルを内包する多軸差動型プローブの作製を行い、複数の渦電流信号から繊維配向を決定する信号処理のアルゴリズムの構築を行う。 ② 渦電流条件とラミネート層間境界の検出精度の相関性評価と母構造側ラミネート積層構造の同定法の構築 ラミネート層間境界の検出精度を向上させるべく、渦電流の周波数と信号強度、および境界情報の定量的評価を行う。その上で、切削によりテーパ部を形成した試験片の表面の走査を行い、各層の繊維配向とラミネート層間境界の検出と精度評価を試みる。 最後に、プローブの走査距離と渦電流信号から得られた繊維配向情報を統合し、プリプレグパッチの構造抽出を行うシステムの試作を実施する。抽出したプリプレグパッチと母構造側のラミネート積層構造の3次元トモグラフィー画像と比較することで、本システムの精度の検証と自動化の検討を行い、本研究を完遂する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2軸直交差動型プローブとそれを用いた高周波渦電流検査システムの作製を次年度に延期したことが理由である。当初の計画では同システムの作製を初年度に予定しており、そのために150万円以上のロックインアンプを計上していたが、より汎用性の高い、4ケ以上の検出コイル信号を増幅する回路の構築を再検討した結果、ロックインアンプの購入と同システムの作製を見送る形とした。
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次年度使用額の使用計画 |
4ケ以上の検出コイルの信号を増幅する回路構築のために、PXI規格を利用したパッケージによる高性能かつ低コストの計測システムの作製を検討している。このためにPXIシャーシと専属のケーブル等の各オプションの購入で繰り越した予算を使用する。
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