研究課題/領域番号 |
15K14144
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
多田 英司 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40302260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 材料加工・処理 / 電気化学プロセス / 薄膜 / 水素イオン濃度 / 電気化学反応 |
研究実績の概要 |
本研究は,電気化学反応がおこる電解質水溶液/電極界面極近傍のpHを測定するために立案されたもので,電気化学反応表面からサブミクロンオーダーの距離におけるpH測定とその表面分布のイメージングを目指すものである.そのため,(1)pH応答性と再現性に優れ,広いpH域で利用できる酸化物表面を探索,創製すること,(2)AFM用カンチレバー表面にpH応答性を最適にチューニングした酸化物薄膜を作製し,フォースカーブによるカンチレバーと反応表面との吸着力測定からpHを評価する手法を確立すること,(3)確立したpH測定手法をpHが表面分布する電気化学反応系に適用し,pHイメージングを図ること,についてチャレンジする. 本年度では,pH応答の再現性に優れた酸化物表面の構築をめざし,酸化物電極のpH応答特性評価および,タングステンおよびアルミナ酸化物薄膜の成膜条件の検討をおこなった.また,比較として,新たにイリジウム酸化物電極によるpH応答特性の評価を実施した.その結果,タングステンおよびアルミナ酸化物薄膜の成膜については,剥離や膜質の不均一などがあり,引き続き成膜条件の最適化および改善が必要であることが示された.また,代替として線材であるイリジウムについて,新たな酸化物電極に用いることを想定し,そのネルンスト応答性についての試験を実施した.その結果,優れたpH応答特性を示すことを明確にした.さらに,この電極を用いて,腐食反応における表面の電気化学反応にともなうpH応答評価の予備測定もおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では,スパッタリングにより作製した酸化物薄膜のpH応答特性を評価する計画であったが,膜質が安定せず,成膜条件のさらなる調整が必要であった.そのため,これと並行して,比較センサーとしてイリジウム電極を用いたpH応答特性評価試験を実施した.その結果,この電極のpH応答がネルンストの式にほぼ応答することを確認し,そのpH応答範囲についても明確にした.さらに,腐食反応による表面pH変化を測定する実験もおこない,腐食の電気化学反応の変化にともなう表面近傍のpH測定がおこなえた. しかし,酸化物薄膜の作製がうまくいかず計画通りに進まなかったため,一年間の延長をすることとした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,スパッタリング法によるタングステン酸化物,アルミニウム酸化物およびイリジウム酸化物について成膜条件の最適化を引き続き実施し,それらのpH応答特性の評価によって,pH応答のチューニング性を検討する.また,AFM用カンチレバーに成膜し,成膜状態とpH応答性を評価とともに電気化学反応界面近傍におけるpHイメージングを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究が計画通りに進行しなかったため,研究延長を申請したため,次年度使用額が生じた.次年度は研究目的を完遂すべく,必要な実験整備に経費を充てる.
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