研究課題/領域番号 |
15K14146
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 幸壱朗 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (80580886)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイブリッド / スマートマテリアル / ハイパーサーミア / MRI / DDS |
研究実績の概要 |
主要ながん治療の一つである化学療法では、抗がん剤により全身に副作用が生じるという問題がある。そこで、カテーテルを用いて局所的に抗がん剤を投与する方法が考案されたが、この方法でも最終的には抗がん剤は全身を巡ってしまう。また、投与部周辺への副作用や、高度医療技術を要するなどの問題もある。そこで本研究では、『腫瘍内で瞬時にゲル化する磁性流体』を合成することで、腫瘍内でのみ抗がん剤を効かせることを可能にし、副作用を軽減することを目的とする。さらに、磁気温熱療法と併用することで、治療効果の増強に挑戦する。 上記の目的を達成するために、平成28年度は以下の二つのことを検証した。①平成27年度に開発した腫瘍内と同様の環境で瞬時にゲル化する磁性流体が、マウスの腫瘍内でも瞬時にゲル化するのか。②上記の磁性流体を投与したマウスに高周波交流磁場(100 Oe, 230 kHz)を印加すると発熱するか(平成27年度に、腫瘍内と同様の環境下おいて作製したゲルに高周波交流磁場を印加すると発熱することを確認している)。 結果を以下に示す。①については、上記磁性流体をマウスの腫瘍に投与し、その後すぐに腫瘍を摘出したところ、腫瘍内でゲル化していることが確認された。また、上記磁性流体を投与したマウスのMRIを経時的に行ったところ、腫瘍から漏れ出すことなくとどまっていることが確認された。②については、上記磁性流体を投与してから1分後に、高周波交流磁場を20分間印加したときの腫瘍の温度上昇の様子をサーモグラフィでモニタリングしたところ、腫瘍温度が約11℃上昇し、がん細胞が死滅する温度まで加熱することができることが明らかになった。 以上の結果は、本研究で作製した磁性流体を用いることで腫瘍のみを局所的に加熱することが可能になり、副作用が小さい温熱療法への応用が期待できることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画としていた研究内容を全て遂行することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、治療効果の評価、毒性・副作用の評価、腫瘍内におけるゲルからの抗がん剤放出挙動の調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも順調に研究が進み、消耗品購入量を削減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要な蛍光顕微鏡を購入する資金の一部にあてる。
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