研究課題/領域番号 |
15K14148
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高木 均 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (20171423)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セルロース / グリーンコンポジット |
研究実績の概要 |
本研究では,現在世界的に期待されているセルロースナノ繊維複合材料の更なる高強度化を行うために,セルロースナノ繊維の機械的延伸処理による配向制御を通した特性改善の可能性を明らかにする目的で研究を行っている.今年度はより大きな延伸配向を実現するために母材であるポリビニルアルコール(PVA)に対してゲル化処理を行ってさらに高延性化させてより大きな延伸変形が可能になるように改良した.そしてゲル化処理PVAを用いた セルロースナノ繊維複合材料を試作し,昨年度と同様に機械的延伸処理を複数回実施してセルロースナノ繊維の配向性の変化を顕微鏡で観察するとともに,延伸処理に伴う機械的性質の改善効果を引張り試験を実施して実験的に調査した. 1.ゲル化PVAを用いたセルロースナノ繊維複合材料の変形特性は未ゲル化材と比較して大幅に改善し,ゲル化していないセルロースナノ繊維複合材料よりも大きな延伸ひずみを延伸処理によって導入することができることを明らかにした.そしてこの改善効果に伴って延伸後のセルロースナノ繊維複合材料の強度改善率は150%に達し,大幅な強度改善を達成することができた. 2.一軸方向に延伸したゲル化PVA/セルロースナノ繊維複合材料の引張強さに注目すると,ゲル化していないセルロースナノ繊維複合材料と同様に0度材(延伸方向と平行方向)の引張強さは90度材(延伸方向と直交方向)よりも大きくなり,配向制御による強度改善効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたゲル化PVA/セルロースナノ繊維複合材料の調製およびこの複合材料を用いた多重延伸実験と強度評価実験を計画通り行い,大幅な(強度改善率150%)強度改善効果を確認できたため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の2テーマに取り組む. 1.セルロースナノ繊維の形態による影響調査 さらなる延伸による特性生改善効果を得るために,繊維長,繊維径などの形態を変化させたセルロースナノ繊維を用いてゲル化PVA/セルロースナノ繊維複合材料を試作し,その延伸処理による特性改善効果を明らかにする. 2.多重延伸加工による配向制御実験 延伸加工中に導入されるナノ繊維強化複合材料中のミクロスケール損傷(ダメージ)を抑えるためにホットプレス加工を行って,導入されるダメージの修復の可能性について検証する.そしてこの処理を複数回繰り返してより均一なセルロースナノ繊維の配向制御を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた金型材料,ビーカーなどの消耗品の使用が少なくなったため次年度使用額が生じた.次年度へ繰り越して研究成果発表用の旅費として使用するため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額160,000円は,6月にエストニアにて開催される国際会議Materials Characterisation 2017で成果発表を行う予定である.
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