研究課題/領域番号 |
15K14154
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小泉 雄一郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10322174)
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研究分担者 |
千葉 晶彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00197617)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 凝固・結晶成長 / 3Dプリンター / 積層造形 / 力学特性 / 多孔体 / 単結晶 / 多結晶 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
金属用3Dプリンタである電子ビーム(EB)積層造形で見出した強い結晶配向性とエピタキシャル成長に注目し、同造形法を形状だけでなく結晶方位も制御する新しい単結晶育成法として発展させるための基礎研究を行った。具体的には、単結晶基板上でのEBを走査させた場合の溶融凝固結晶成長挙動に対する、EBの走査方向・走査速度・エネルギー及の影響、予熱の影響、粉末の有無の影響を実験的に調べるとともに、有限要素解析により、凝固時の熱流方向、固液界面での温度勾配(G)ならびに凝固速度(R)を評価した。それを基に高速溶融凝固条件での凝固結晶成長を科学的に理解・予測する方法を検討した。なかでも、広く積層造形が適用されているインコネル(IN)718合金を用いた実験で多くの成果が得られた。 IN718合金多結晶ならびに単結晶バルク材に、出力P=100~1000 Wの6水準、走査速度V=100~10000 mm/sの5水準の計30種類の条件にて電子ビーム走査させた。溶融凝固で形成されたビードの幅と深さは、0~2 mmの範囲で、単位走査距離辺りの入力エネルギー(Line energy = P/V )の上昇とともに、ほぼ単調に増加した。ビード進行方向に垂直なビード断面の結晶方位分布をSEM-EBSDにて評価したところ、下地結晶の結晶方位を引き継いでビード内に結晶が成長する所謂エピタキシャル成長の発現が認められた。その発現頻度は、ビードの幅方向の中心部分すなわち凝固方向が試料表面に垂直な方向に成長する部分で高かった。但し、そのような部分であっても全ての結晶でエピタキシャル成長するわけではなく、下地の結晶方位の制御による造形物の結晶方位制御は、特定の結晶方位でのみ可能であることが示唆された。この成果により、3Dプリンターで形状だけでなく結晶方位も制御してこれまでに得られない力学特性を有す材料を創製の指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定どおり、IN718合金単結晶材を用いた電子ビーム走査による溶融凝固とそれによる結晶組織形成を調べることができた。種々の電子ビームの出力や走査速度での、ビードの組織観察を行った。単結晶だけでなく多結晶体を用いて実験を行うことにより、下地の結晶方位が異なる場合の凝固組織を効率よく調べることができ、当初の予定よりも大幅に研究を進展させることができた。またフェーズフィールドシミュレーションの準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの成果に基づいて、単結晶育成に適切な電子ビームの条件で実際の造形を行う。また、結晶方位を制御した種々のセル多孔体を造形するとともに、その力学特性評価を行う。また、構造最適化計算により設計したセル多孔体の造形も行いその力学特性も評価する。これにより、提案する設計手法の有用性を検証し、3Dプリンターで形状だけでなく結晶方位も制御することにより、これまでに得られない力学特性を有するセル多孔体の創製のための、学理を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初Inconel718合金粉末の購入を予定していたが、この合金の電子ビーム積層造形における組織形成が、金属粉末の性質の微妙な違いにより大きく異なり関連研究の成果により判明し、適切な粉末を見極められるまで、その購入をみあわせる必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
適切な粉末の性質が判明しつつあるので、最終確認を行った後に、粉末を購入する。
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