固体イオニクスデバイスでは,添加イオンが表面へ拡散し,表面析出物を生成するために,表面反応を阻害し,デバイス性能を低下させることが大きな問題となっている.本研究では,La-Sr-Co-Fe-O(LSCF)について,機械的な応力負荷下における添加イオンの析出挙動を明らかにすることを目的とした.四点曲げ下においてアニールを行い,無負荷および引張・圧縮応力負荷下での添加元素の析出挙動を調べた.走査型電子顕微鏡,エネルギ分散型X線解析およびオージェ電子分光分析を行った.観察結果より,機械的応力負荷,特に圧縮応力負荷により,析出が抑制されることが示された.また分析結果より,析出初期にはSを含む相(SrOなど)が析出した後,成長過程でSとの反応物(SrSO4など)を生成することがわかった.さらに観察・分析結果に基づき,機械的応力を受けるLSCF多結晶体におけるSr析出モデルを提案した.析出抑制を考える上では,粒界すべりを伴わない粒内拡散によるクリープ変形が生じる程度の機械的応力負荷が有効である可能性を示した.
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