本研究の目的は、社会基盤構造物の安全監視を実現するために、疲労損傷を記憶する新しい無線センサタグを提案することである。基本的なセンサ原理としては、疲労損傷の累積に伴い電子タグが順々に破壊されることにより、記録データが変化し、それをRFIDの技術で読み出すことで疲労損傷度を計測するものである。これまでに様々な疲労監視技術が提案されているが、新規の計測システムへの置換には莫大な予算が必要となるため、適用できる範囲が限られる。そこで本研究では、最近の無線タグ技術を応用することで、実際の現場で簡便に使用でき、非常に経済的な疲労センシング技術の構築を目指す。具体的には、(1)疲労センサタグの開発、(2) RFIDセンサネットワークの構築、(3)構造物への適用を行った。今年度は、多数のセンサタグから構成される無線センサネットワークの構築を行い、広域損傷モニタリングを提案した。さらに3Gでインターネット等に接続することで遠隔地モニタリングを可能とする監視システムを構築した。また腐食環境下など多様な条件における寿命予測にも対応できるように、ACM型腐食センサや電気抵抗式腐食センサなどを利用して、腐食計測可能なセンサタグについて検討した。それらの計測結果を材料の疲労・腐食データベースに照会することで、構造物の劣化損傷の直接的評価が期待できる。さらに点検・補修など履歴管理のための電子タグと組み合わせて使用することで、より効率的な寿命管理システムの構築が期待できる。
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