研究課題/領域番号 |
15K14158
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30466776)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリコン / 発光材料 / イガグリ構造 / 酸化消光への耐性 / 放射状結晶構造 |
研究実績の概要 |
フッ化水素酸と硝酸の混合比や濃度を変え、シリコン(Si)マイクロ粒子のイガグリ構造の制御を行った。イガグリ構造は、Siマイクロ粒子内部の放射状に発達した結晶粒界(欠陥)に添って、優先的にエッチングが進むために生じる。酸濃度が高いと、エッチングの速度が速く、イガグリ構造が十分に発達しないまま、マイクロ粒子の粒径自体が小さくなる。このため、初年度は、イガグリ構造を積極的に制御するための、適切な酸濃度や、酸液量を明らかにすることに注力をした。エッチング液の温度制御も組み合わせた結果、エッチング液濃度や液量、エッチングに要する時間でイガグリ構造を制御できる目処が立った。 エッチング後のイガグリ粒子の発光特性を、蛍光顕微鏡で観察した。粒子一個一個で発光の色が異なること、更には、一個の粒子であっても、粒子表面全てが光るわけではなく、発光部位が存在すること、発光部位毎に発光強度も異なること、を明らかにした。よく光る粒子と余り光らない粒子とのイガグリ形状の差を電子顕微鏡を併用して観察を進めている。また、イガグリ粒子の発光特性に対する周辺ガス種(特に、酸素)の影響を検討するための、観察用の真空チャンバーを独自に作製し、真空下や酸素分圧が制御された環境で、イガグリ粒子の発光特性を観察できる実験環境を整えた。細かいイガグリ構造と、粗いイガグリ構造とでは、酸素による酸化消光に対する応答が大きく異なることが期待される。この点について、チャンバーを用いて、次年度に引き続き検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、イガグリ構造を制御するためのエッチング条件は確立済みである。また、イガグリ粒子の発光特性の観察環境も、既に整え、個々の粒子毎の発光特性の違いも明らかに出来ている。研究計画に記載のある、直径10 micron程度の粒子毎の発光スペクトル測定を成功させるにはもう一工夫必要であるが、総じて研究計画の通りにすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した、エッチング法、観察チャンバーを利用して、発光材料として長時間に渡って機能を維持できるイガグリ粒子の構造を明らかにする。光学顕微鏡で、基板上に載せたイガグリ粒子の発光特性を観察した後、同じ基板上のサンプルを電子顕微鏡で観察して、イガグリ形状と、発光特性の相関を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算申請の段階では、マルチチャンネル分光光度計の購入(150万円)を予定していたが、同等の分光器を別途確保できる見通しが立った。このため、購入を取りやめ、その購入予定金額と同程度が余剰金となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分として請求した助成金(80万円)と合わせると、直接経費は約220万円である。 イガグリ粒子の構造評価を電子顕微鏡だけでなく、窒素などのガス吸着法による定量的な粒子表面積測定も予定している。この測定には、一定量以上のイガグリ粒子が必要であるため、イガグリ粒子の原料であるSiマイクロ粒子を大量に合成することとした。この粒子合成用に反応器をもう一台作製し、関連するガス配管や、石英製治具などの作製・購入を予定している。このほか、試薬等の消耗品、学会での成果発表(旅費)、英文校正費として、使用する計画である。
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