昨年度に作製をした観察用サンプルチャンバーを使用して、真空環境下や窒素雰囲気、大気など様々な環境下でイガグリ粒子の発光挙動を観察した。消光の原因である酸素の分圧が一定であるにもかかわらず、雰囲気の全圧が高い場合には消光が著しく、減圧下では、消光の程度が小さかった。当初の目論み通り、気体中の酸素分子の平均自由行程の長さと、イガグリ粒子の溝間隔の相対的な関係で、消光現象を制御出来る可能性を示す結果であると考えている。この成果を、学会で発表した。 イガグリ状粒子を多量に作製し、窒素吸着による表面積の測定を行った。イガグリ粒子は10マイクロメートルほどの直径であるが、表面積は100 m2/g程度と大きく、7 nm程度のナノ細孔を多数有する構造であることが分かった。このイガグリ粒子を意図的に粉砕し、イガグリ構造をなくした場合や、励起光の波長を変えた際の発光挙動についても検討を行い、データをまとめている段階である。 また、そもそものマイクロ粒子の内部結晶構造を、透過型電子顕微鏡を用いて断面観察し、粒子中心部に72°ずつ回転をしたシリコン単結晶群が「核」として存在することを突き止めた。加えて、中心部から放射状に発達した結晶粒界が、主にSi{111}面に添って起こる転位(dislocation)であることを明らかにした。亜鉛融液内に溶け込んだケイ素が過飽和となってシリコン結晶化が起こるため、放射状の特徴的な結晶構造が形成されたと考えている。この結晶粒界に添って優先的にエッチングが起こるため、イガグリ状の特異な粒子形状に変化する。この成果は、CrystEngComm誌に掲載受理された。 気相反応でのシリコン結晶の生成に関連して、結晶化が起こる際の「結晶化熱」が結晶成長・温度に与える影響は重要である。結晶化による温度上昇を数理モデルを用いて定量的に評価し、成果の一部を学会発表した。
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