研究課題/領域番号 |
15K14160
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素透過膜 / バナジウム / アンモニア合成 |
研究実績の概要 |
水素透過金属膜には、膜の低水素圧側(2次側)表面に活性な水素原子を連続的に供給する機能がある。また、バナジウムには窒素分子の解離能があると考えられている。従って、バナジウム系水素透過合金膜について、水素透過をさせながら膜の2次側表面に窒素を供給することで、透過してきた水素原子と解離した窒素原子が反応し、アンモニアが生成することが期待される。本研究では、バナジウム系水素透過合金膜の2つの機能を活用したアンモニア合成法の可能性について検討した。 実験には直径12mmのV-10mol%Fe膜試料を用いた。試料表面へのPd-Ag合金の被覆形態を変えた3つの試料について、水素透過試験およびアンモニア合成試験を行った。各試験は、温度623K、水素の1次圧0.4MPa、2次圧0.1MPaの条件にて行った。アンモニア合成試験では、水素を透過させながら2次側に大気圧の窒素を吹きつけた。この時、窒素の流量は透過水素流量に対して1:1となるよう調節した。発生するオフガスを蒸留水にバブリングし、その溶液にネスラー試薬を加えることでアンモニアの検出を行った。 水素透過試験およびアンモニア合成試験を行った結果、V系合金膜を用いた水素透過には1次側だけでなく2次側にもPd被覆が必要であることが分かった。ネスラー試薬を用いたアンモニア検出の結果、Pdを格子状に被覆させたV系水素透過金属膜を用いることで、アンモニアが合成できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標である、バナジウム系水素透過膜の機能活用による新規アンモニア合成法の可能性を確認した。しかしながら、アンモニアの生成量は微量であった。
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今後の研究の推進方策 |
合成されたアンモニアの収率が低い原因として、吸着した窒素原子とバナジウム原子の相互作用が強すぎることが原因の一つとして考えられる。またバナジウムが酸化しやすいことも問題である。 そこで、アンモニア合成の収率向上を目指して、窒素および酸素との親和力が弱い合金元素の探索を行う。具体的には、第1原理計算により、窒素および酸素との結合力が小さい合金元素について調査を行う。そして、これらの合金元素を添加したバナジウム合金膜を作製しアンモニア合成試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
バナジウム系水素透過合金膜を用いた新規アンモニア合成法の可能性を確認した。しかし、アンモニアの生成量は微量であった。その原因として、吸着した窒素原子とバナジウムの相互作用が強すぎることが原因の一つとして考えられる。またバナジウムが酸化しやすいことも問題である。 そこで、研究期間を延長してアンモニア合成の収率向上を目指した追加実験を実施する。
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次年度使用額の使用計画 |
窒素原子および酸素原子との親和力が弱い合金元素の探索を行う。具体的には、第1原理計算により、窒素および酸素との結合力が小さい合金元素の候補を選定する。そして、これらの合金元素を添加したバナジウム合金膜を作製し、アンモニア合成の追加試験を実施する。
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