研究課題/領域番号 |
15K14165
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
萩原 幸司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10346182)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 圧電材料 / バイオセラミックス / 生体材料 / 複合材料 |
研究実績の概要 |
本年度は生体親和性圧電材料の開発に向けた第一歩として,生体為害性が低いと考えられる元素から構成されているK-Na-Nb-O系圧電体,いわゆるぺロブスカイト型(K,Na)NbO3 [KNN]と,骨置換材としての利用を視野に入れ,骨主成分であるハイドロキシアパタイト(HAp)との複合体の作製可能性を検討した.この結果,KNNとHApの混合焼結により,期待通りの複合体が作製可能であることが見出されたものの,その特性は初期HAp粒径に依存して劇的に変化することが明らかとなった.粒径な週百nmオーダーの市販HApをそのまま混合した際には,焼結時にKNNと激しく反応することにより,圧電特性がKNN単体の10%以下まで低下してしまうという大きな問題が明らかとなった.そこでこの対策として,KNNとの混合前に,HApに予焼結を行い,粒径を5μm程度に粗大化させる,という前処理を検討した.この結果,約50[pC/N]という高い圧電特性を示すKNN/HAp複合体の作製に成功した.またこのKNNの生体親和性を調査すべく,粉砕したKNN粉末を浸漬した生体疑似溶液から抽出した溶液中における細胞培養実験を行い,圧電材料としてもっとも一般的に知られる材料であるPZTと比較して,期待通り高い生体親和性を示すことを確認した.さらに上述のKNN/HAp複相体の作成過程において,気孔の導入が圧電特性に影響を与える可能性が見出されたため,その組織制御法に関する検討をさらに進めた.加え,他の組織制御法として,高温圧縮の可能性について現在検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規生体親和性圧電材料の創製について,KNNの示す高い生体親和性について確認するとともに,既にKNN/HAp複相材の作成に成功し,その特性制御法に関する検討が進められている.今後さらに,この複相材料が示す骨誘導能について評価するとともに,他のバイオセラミックスとの複合化についても検討を進める.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,昨年度までに作製に成功したKNN/HAp複相材について,浸漬実験により骨誘導能の有無について評価するとともに,その力学特性に関する考察も行う.またこの複合体が示す諸特性のHAp体積率依存性について検討するとともに,他のバイオセラミックスとの複合化についても検討を進めることで,生体親和性圧電材料開発のための指針を明らかにすることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
計上した大型装置購入は,減額によりその購入が困難と判断し見送った.また2015年度は別予算を本研究に集中的に投資することが可能であったため,次年度を見据え別資金を選択的に使用することで,当初実験計画を滞りなく実施した.
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次年度使用額の使用計画 |
計画書に記載の通り,試料作製,組織制御のための熱処理に必要な消耗品および浸漬実験用の生体疑似溶液の購入などを中心に使用していく予定である.加え,得られた成果を学術会議などで研究発表するとともに,積極的に最新知見を得るための海外旅費(国際会議参加費)などにも使用する予定である.
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