長周期積層型規則構造相とα-Mg相(hcp構造)の二相組織を有するMg-Zn-Y合金の押出材に対して、共鳴超音波スペクトロスコピーと電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて、室温にて各相の弾性率、形状および体積分率を反映した全ての独立な弾性スティフネスを測定した。さらに、電磁超音波共鳴法を用いて10 K近傍の低温域での弾性率の測定をおこなった。押出加工材の加工方向に平行および垂直な断面に対する光学顕微鏡観察を行い、二相組織中の長周期積層型規則構造相とα-Mg相の形態およびそれらの体積分率を明らかにした。また、X線極点図測定を用いた結晶配向性の解析を実施し、電子線マイクロアナライザーを用いた長周期積層型規則構造相とα-Mg相の組成分析をおこなった。得られた結晶配向性、長周期積層型規則構造相とα-Mg相の体積分率および形状の情報に基づき、Mori-Tanakaの平均場近似、Eshelbyの等価介在物理論およびinverse Voigt-Reuss-Hill近似を用いて、長周期積層型規則構造相の弾性特性を解析した。その結果、長周期積層型規則構造相の弾性率は、Mg-Zn-Y合金中のZnおよびY濃度に依存することが明らかになった。第一原理計算を用いてMg-Zn-Y合金中に形成される短範囲規則クラスターを考慮した弾性率の計算をおこなった。その結果、長周期積層型規則構造相の弾性特性は短範囲規則クラスターの密度およびクラスターの安定性に依存することが明らかとなった。また、第一原理計算により、長周期積層型規則構造相の積層構造(14H、 18R、10H)が弾性特性に及ぼす影響を明らかにした。
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