研究課題
本年度は、電子系と原子核の相互作用である超微細相互作用を用いて、電子物性に格子物性に関する知見も加味して、熱伝導抑制機構と磁性との関わりについて明らかにすることを試みた。対象物質としては、カゴ状構造を有する物質群について放射光メスバウアー分光を用いて、これらの電子物性及び格子物性に関する知見を得ることができた。SmがBeやBのクラスターの中に配した構造を有するSmBe13やSmB6では、Sm-149核のメスバウアー効果を用いて2次のドップラー・シフトの観測に成功し、Smの価数とともに格子振動状態に関する知見も同時に得ることができた。SmB6については、過去の放射性同位元素を線源としたメスバウアー分光が行われているが、2次ドップラー・シフトに関する報告は無い。本研究で用いた放射光メスバウアー分光では、スペクトルの吸収ピーク位置の誤差も以前の報告より1桁近く小さくなっていることがその理由として挙げられる。スペクトルの精度向上には恐らく放射光の有する指向性がその大きな要因であると現在考えている。本年度は熱電材料の候補である充填スクッテルダイト化合物に関する放射光メスバウアー分光についても行った。充填スクッテルダイトではカゴ構造に充填された希土類が大振幅非調和振動を示すことが知られている。放射光メスバウアー分光では、構造から期待される大振幅非調和振動のために、充填スクッテルダイトのスペクトルを100K以上で観測することができなかった。また、本研究を通してメスバウアー効果を利用したミクロな測定だけではなく、マクロ測定に基づく種々のカゴ状物質の電子物性や格子物性に関する理解が進んだ。
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