全固体真空紫外レーザー光源の実現には、真空紫外光を吸収しない非線形光学結晶を用いて波長変換する必要がある。この非線形光学結晶に周期分極反転構造を形成して擬似位相整合できれば、複屈折による位相整合よりも高効率で波長選択性のある波長変換デバイスとなる。四ホウ酸ストロンチウムと四ホウ酸リチウムは真空紫外光を透過する非線形光学結晶であり、これを用いて周期反転構造を作製できれば真空紫外レーザー光を発生させる擬似位相整合結晶として利用できると考えた。従来の擬似位相整合結晶は外部電界を用いて作製されているが、これらのホウ酸塩結晶は非強誘電体なので外部電界により自発分極を反転させることはできない。本研究では、強誘電体の自発分極の代わりに非強誘電体のホウ酸塩結晶の双晶を利用して周期双晶を作製することで擬似位相整合結晶を実現することに取り組んだ。特に、1.結晶成長条件と双晶形成頻度の相関と双晶形成頻度の制御」、2.結晶成長方位と双晶界面方位の関係、3.双晶間隔を調整した周期双晶の作製と光学特性評価の3項目に取り組んだ。現在利用されている強誘電体の擬似位相整合結晶は、単結晶を育成した後に、結晶を成形して、電極を積み、外部電界を印加して反転操作するといったプロセスが必要である。これに対して、本研究で提案するホウ酸塩結晶周期双晶による擬似位相整合結晶は、育成した結晶が周期反転構造を持っており、従来よりも生産性が高い波長変換デバイスになると期待できる。
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