高強度レーザー反応場を利用した高速化学気相析出法を用いることで、顕著な自己配向成長や樹枝状成長を伴うセラミックスコーティングを合成することができる。これは、原料気相中に活性な化学気相析出の反応場を創り出すことで、過飽和原料雰囲気下でも気相とセラミックスコーティングの界面における反応性が失われず、従来法を卓越する結晶成長が起こるためである。本研究課題では、高活性・高過飽和度の条件下において、共晶系セラミックスを高速化学気相析出させることで、気相からの共晶成長を達成し、共晶反応に伴うナノ構造の自己組織化を統合した新規セラミックスコーティングプロセスを開発することを目的とする。 本年度は、TiO2-SrTiO3系、SrTiO3-SrO系およびTa2O5-NaTaO3系においてセラミックスコーティングを合成し、コーティングの合成条件が構成相、結晶配向および微細組織に及ぼす影響を調べた。原料として、Ti、SrおよびNaにはβ-ジケトン錯体を用い、Taにはアルコキシドを用いた。TiO2-SrTiO3系では、SrTiO3柱状晶中にTiO2ナノ柱状晶が成長したナノコンポジット膜が得られ、先端分析電顕を用いて微構造を同定した。また、SrTiO3-SrO系では、一連のRuddlesden-Popper相が化学気相成長できることを示した。研究をTa2O5-NaTaO3系に展開し、NaTaO3単相コーティングの化学気相成長に世界で初めて成功した。SrTiO3およびNaTaO3コーティングの光触媒特性を調べたところ、従来法や溶液法で合成した粉末試料と比べて、優れた水素生成能力を有することが明らかになった。ナノコンポジットコーティングでは、さらなる光触媒特性の向上が期待できることから、今後の研究展開を計画している。
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