研究課題/領域番号 |
15K14178
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
半谷 禎彦 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80361385)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポーラスアルミニウム |
研究実績の概要 |
ポーラスアルミニウムは多孔質構造を有する素材である.そのため,緻密材と比べ,軽量なだけでなく優れた衝撃吸収性,断熱性,吸音性などを有する.軽量性により,自動車用部材へ適用することで燃費の改善が可能となる.また,自動車部材への適用に際して安全性を確保するために,圧縮特性の向上が必要である.しかし,純アルミニウム単体のポーラスアルミニウムでは圧縮特性の向上には限界がある. そこで,圧縮特性を向上させる目的として純アルミニウムに高強度なアルミニウム合金粉末を添加することを考えた.アルミニウム合金粉末は優れた比強度を有している.そのため,ポーラスアルミニウム中に高強度なアルミニウム合金粒子が存在することにより,圧縮特性のさらなる向上が期待できる.ポーラスアルミニウムの作製方法として,摩擦粉末焼結法(Friction powder sintering process)を採用した.摩擦粉末焼結法は,摩擦熱および圧縮過重負荷を部分的に数十秒間加えることにより,混合粉末を焼結させることができるため,雰囲気全体を長時間加熱する必要がない作製方法である.加えて,焼結とスペーサー粒子の除去に外部熱源が不要であることから,生産性の向上および環境負荷の低減が可能である. 本研究では摩擦粉末焼結法を用いて気孔率70%のアルミニウム合金粉末を添加したポーラスアルミニウムの作製を試みた.静的圧縮試験によりポーラスAlの圧縮特性の評価を行った.これによりアルミニウム合金粉末添加が圧縮特性にどのような影響を及ぼすか検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
純Al粉末(粒径3 μm),アルミニウム合金粉末(粒径26-38 μm)とNaCl粉末(粒径300-425 μm)を原材料として用いた.このように,段階的に変化させることが,良好な焼結性が得られると経験的に分かった.それら粉末を混合し,摩擦粉末焼結法により焼結させた後,NaClを水洗により除去することで,本研究のポーラスアルミニウムを得た.水洗時における焼結不足による崩れは見られなかった.また,作製したポーラスアルミニウムに対してX線CT撮像を用いてNaClの除去の完了の確認およびポーラスアルミニウムの気孔形態の観察を行った.X線の透過率の違いからアルミニウムが存在する部分は白く写り,黒い部分はポーラスアルミニウムの気孔であると判別できる.このことからNaClは完全に除去されたことが確認できた.そして,気孔形状に注目してみるとポーラスアルミニウムの気孔はスペーサーであるNaClの形状を転写した形状を有していることが確認された.得られたポーラスアルミニウムの応力ひずみ曲線から,アルミニウム合金粉末の混合の有無にかかわらず,ポーラス金属の特徴である応力値がほぼ一定となるプラトー領域が確認された.また,アルミニウム合金粉末を混合することで,圧縮応力およびプラトー応力値は上昇することが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
アルミニウム合金粉末の混合量と,プラトー応力の関係を整理することや,他の焼結法(スパークプラズマシンタリング)等と,比較を行うことなどを検討する.また,スペーサーとして,どの粒径のものが最適かについても検討する.気孔率は,60%,70%,80%となるようにNaClを混合し,それぞれについて比較を行う.
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