研究実績の概要 |
微量水素を含む純チタン焼結材における高強度化・高延性化挙動に資する水素原子の影響を解明すると共に,β→α相変態時に加工による歪み場を付与し,<0001>αと<10-10>αが相互配列するハイブリッド集合組織の形成によりチタン材の高強度化に資するプロセス設計を構築する.本研究で実証する特異な集合組織は,熱間塑性加工過程で生じるβ→α相変態においてバーガースの結晶方位関係に起因する上記の相互結晶配列が主要因である.そこで,水素と同じくβ相安定化元素である鉄Feを微量含むTi-Fe(Fe≦4wt%)合金に対して上記の考えを展開し,組織形成機構の普遍性の検証を通じて高強度・高延性化を実証した.Ti-Fe合金は,常温にて本来α+β2相合金であるが,βトランザス以下の温度域で熱間塑性加工を施すと,上記の異なる結晶配向が相互配列した集合組織を形成すると同時に,初析α相が変態後に析出するα相の粒成長の抑制により1~2µm程度のα-Ti等軸微細粒が形成され,高強度と高延性が同時に発現することを確認した.またTi-H系合金では,上記の集合組織形成による高強度化と脆性TiH2相の均一分散による変形双晶の抑制に基づく高延性化を確認した.その上で多量の水素を強制的に含有したチタン合金の高度再資源化を実現すべく,チタン合金を水素化熱処理するプロセス条件と粉砕加工性の相関を調査し,原料粉末として再利用に資する熱処理条件の適正化を検討した.400℃以上の水素化熱処理により水素含有チタン合金の粉砕加工性は著しく向上し,酸化現象による危険性も解消できること,またそれらの粉砕粉末を焼結する際,水素原子の拡散により固相焼結が加速して緻密化が促進することを実証した.これらの研究成果はJ. Umeda et al. Materials Transactions, 58 (2017) 1702-1707.に掲載された.
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