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2015 年度 実施状況報告書

金属粉末の膨張過程を利用したエネルギーフリー投薬システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K14184
研究機関首都大学東京

研究代表者

楊 明  首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (90240142)

研究分担者 清水 徹英  首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70614543)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードマイクロ・ナノデバイス / 粉末プロセス・粉末冶金 / 金属粉末酸化 / 体積膨張 / マイクロ投薬システム
研究実績の概要

以下に成果を示す。
① 金属粉末酸化体積膨張過程への影響因子の評価
鉄粉の酸化雰囲気制御可能なチャンバーを製作した。適量の酸素と水蒸気を供給し、鉄粉表面処理および凝集防止のための添加剤有無など数種類の鉄粉を用いた実験を行い、鉄粉酸化進行状態を評価した。鉄粉の状態変化をSEMで観察し、さらにEDX分析を行った。結果から雰囲気中で、鉄粉表面に酸化膜が形成され、条件によっては粒同士が酸化膜で連結されていることが確認できた。EDX分析からも、粒子間の連結箇所には酸素が多く存在することが確認できた。また、表面処理の場合触媒効果により酸化がより早く進行した。また、添加剤は粒子間の凝集の抑制に効果があった。
② 鉄粉酸化による体積膨張の評価
PDMS樹脂のモールディングにより、簡易なポンプ機構を製作した。液体チャンバーと鉄粉チャンバーを薄い膜で隔離し、鉄粉の体積膨張によって液体が押出される仕組みである。また、ステンレスメッシュで鉄粉チャンバーをカバーし、酸素と水蒸気が流入できるようにした。各種鉄粉を用いた体積膨張率の評価を行った。9時間の酸化膨張試験結果より、表面処理していない鉄粉は体積膨張が殆ど起こらなかったが、表面処理した場合は、2mLの鉄粉の体積膨張によって、最大1.4mLの液体が吐出された。2.5μl/minの流量が得られた。また、添加剤としてステアリン酸粉末を0.1%、1.0%、5.0%添加した場合の結果を比較すると、1.0%の場合が最も膨張率が大きく、5.0%がその次で、0.1%が最も小さい結果となった。1.0%の場合、粉体の流動性が高まり、凝集が抑制され、体積膨張率が高かったのに対して、0.1%では粉体の流動性が悪く、凝集が起こっていた。また、5.0 %添加の場合は過度の添加により相対的な鉄粉体積が減少することで、鉄粉全体の膨張量が減少したものと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は研究実施計画通り、金属粉末酸化体積膨張過程への影響因子の評価と鉄粉酸化による体積膨張の評価の2つの項目について研究を実施し、成果を得られたため、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

次年度は今年度の結果を踏まえて、金属粉末の酸化膨張を最低限に利用したマイクロ投薬システムの設計・製作・評価を進める。具体的な実施項目は以下の通りである。
(a) 基礎特性に基づいた投薬システムの設計:体積膨張による液体の押出し特性を踏まえ、日常的な生活環境における温度、湿度においてより高い膨張率を取得可能な寸法形状を元にマイクロ投薬システムの設計を行う。雰囲気と接触する表面積をデバイス中の穴の面積により制御を行うため、ここではその穴数を上記基礎検討事項により設計を行う。それを元に3Dプリンタを用いた実物モデルを作成し、所望の仕様が取得可能か評価を行う。
(b)マイクロ投薬デバイスの試作:上記の寸法・形状仕様に加え、使用材料を機能毎に選択した上で、同デバイスの試作を行う。その作製には、可能な限り安価な製造方法を提案することを原則とする。金属材料のマイクロフォーミング技術や高分子材料のマイクロ射出成形等各種加工について検討する。同送液システムを既存のパッド型のDDRシステムと組み合わせることで経皮投与型DDSシステムを構築する。
(c)経皮投与型DDSマイクロデバイスの特性評価:最終的に(b)で作成したマイクロ投薬システムの特性評価を行う。まず送液デバイスとしての基礎仕様であるP-Q(圧力-流量)特性を評価し、経皮投薬への適用可能性を検証するため、上記基礎的知見に基づいた諸元が得られるか検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

今年度、既存装置の改良による環境制御チャンバーを製作したことにより、予定より低いコストで実現した。次年度は各種デバイスの試作を行うこと、一部(3Dプリンティング)外注する予定していることから、予算が必要と予想されるため、なるべく予算を次年度に繰り越しをした。

次年度使用額の使用計画

具体的な使用計画を以下に示す。
① マイクロ投薬システムの設計に基づいた3Dプリンタを用いた実物モデルの作成(外注)。
② 金属材料や高分子材料等の各種材料によるマイクロ投薬デバイスの試作。

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公開日: 2017-01-06  

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